『舞いあがれ!』舞と貴司の結婚式に満ちた祝福と涙 輝く夏の大三角と久留美に滲む寂しさ

「大事な友達と大事な友達が家族になりました」

 そんな久留美(山下美月/幼少期:大野さき)の台詞とともに、『舞いあがれ!』(NHK総合)第21週初日の放送は大きな喜びとほんの少しの寂しさをお茶の間にもたらした。

 舞(福原遥/幼少期:浅田芭路)が小学生の頃にかわいがっていたうさぎのスミちゃん。うさぎ小屋を脱走したスミちゃんは3人の孤独を抱える子どもたちを繋ぎ合わせてくれた。

 舞と久留美と貴司(赤楚衛二/幼少期:齋藤絢永)。幼なじみの3人は好きなことも大事にしているものも、価値観も違う。だけど、いついかなる時も、どこにいようとも互いの幸せを願ってきた。そういう存在がいてくれるから、安心して自分の道を歩める。心に飛び立つ場所と帰ってくる場所=滑走路があるから、舞という飛行機はその翼を広げ、どこへでも行くことができた。

<星たちの 光あつめて見えてきた この道を行く 明日の僕は>

 「短歌にしたら一瞬が永遠になる」という舞の言葉通り、貴司の歌であの日の光景が鮮明に浮かぶ。五島の砂浜に座り、3人が未来を見つめた朝。あの日から十数年が経ち、舞と貴司が結婚した。ものづくりの街・東大阪からスタートし、五島列島、浪速大学、航空学校と様々な場所を旅して、また東大阪に帰ってきた舞。行く先々で出会った人たちが見守る中、舞は貴司と愛を誓う。その光景を誰よりも喜び、同時に湧いてくる寂しさをお酒に溶かしながら見つめていたのが久留美だ。

 6月から8月にかけて夜空に輝く夏の大三角は、こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブという3つの1等星を結んでできる。そのうち、ペガとアルタイルは天の川をはさむようにして向き合ってることから、それぞれ織姫と彦星になぞらえられるようになった。それまでは3つで1つだったのに、急にはぐれたようなデネブの寂しさを抱える久留美。ただ、7月7日の七夕の日にはカカサギが翼を広げ、織姫と彦星を出会わせてくれるという説もあり、このカササギの橋がデネブに当たるとされている。

 舞が「今日、星きれいやで」という久留美の言葉をきっかけに窓を開けたら、隣に住む貴司も窓から顔を出していたことがある。向かい合わせで夜空を見上げる二人の間にはまるで天の川が流れているみたいだった。一度は離れそうになった二人の心を久留美が繋げてくれたのだ。

 だけど、寂しいものは寂しい。嬉しさも混じった心地の良いその孤独に寄り添ってくれるのは、再スタートを切った悠人(横山裕)。子供の頃、浩太(高橋克典)もめぐみ(永作博美)も舞につきっきりで悠人も寂しい思いをしたが、それを舞本人には決して見せなかった。自分の寂しさを隠して相手の幸せを願う。そんなちょっぴり切なくて優しい二人が好きだ。

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