『大奥』斉藤由貴演じる春日局が恐ろしい 原作にはない福士蒼汰のセリフが意味するもの

「名は? あのお方は、ほんまは何という」

 原作にはない台詞が、“2人”の数奇な運命を重ね合わせる。

 財政難の徳川幕府を立て直すため、様々な改革に乗り出した8代将軍・吉宗(冨永愛)。手始めに行ったのが、大奥に仕える若き美男子たちに暇を出すことだった。そもそも、大奥にはなぜ男たちが侍るようになったのか。その成り立ちから、すべて出来事が記録された『没日録』に吉宗がたどり着いた時、大奥誕生の秘密が明かされる。

 NHKドラマ10『大奥』第2話から「3代・徳川家光×万里小路有功編」がスタート。そこには、春日局(斉藤由貴)という1人の女性に翻弄された男女の物語があった。

 寛永15年、3代将軍・家光の時代に有功(福士蒼汰)という名の僧侶が継目祝いで江戸城を訪れる。しかし、それは家光の乳母である春日局によって仕組まれた罠。有功は春日局に無理やり還俗させられ、大奥入りを果たす。そこで初めて見た家光(堀田真由)は、少女の姿をしていた。

 遡ること6年前、本来の家光公は「赤面疱瘡」で帰らぬ人となった。だが、家光には直系男子がおらず、世間に徳川の血が絶えたことが知れ渡れば、再び戦乱の世が訪れるやもしれない。その死は伏せられ、家光が市中の女性に産ませた唯一徳川の血を引く娘を身代わりとして“3代将軍・家光”の座に据えたのだ。

 春日局の息子・稲葉正勝(眞島秀和)の口から淡々と語られる衝撃の事実に狼狽しながらも、有功が彼に訊ねたのは家光になる前の少女の名だった。それはなぜかといえば、家光に“お万”という名を授けられた時、“有功”という親よりの名を使わせてほしいと願い出てしまったからだ。彼女がどんな人生を歩んできたのかを知っていれば、思慮深い有功がそのようなことを願い出るはずがない。家光は本来の名も、人生も奪われた人間なのだから。

 そう考えると、家光が癇癪を起こし、何度も扇子で有功をぶった理由もより理解できる。さらにいえば、有功もまた実の父親に売られ、お万の方として大奥で生きていくことになるのだ。そして、家光と有功は同じ運命を辿った者同士、少しずつ心通わせていく。

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