『舞いあがれ!』高橋克典の不在を実感する15分間 経営者としてめぐみが選ぶ未来とは?

 ベストな答えを出そうにも、浩太亡き今、経営と技術の両方を担えるリーダーがいない。これまで不思議なほど触れられてこなかった後継者問題がここにきて浮上する。逆に言えば、後継のことなど考える暇がないくらい、浩太は目の前の危機を乗り越えることで精一杯だったのだろう。

 浩太は決して、経営者として完璧とは言えなかった。それでも、何十年と会社と従業員、そして家族を守ってきた。リストラという苦渋の決断を言い渡したパートのおばちゃんからも「ここのねじはええねじなんや」「この工場、潰さんといてな」と逆に励まされるほどの品質を守り、慕われてきた。大きな責任を背負ってきた浩太の存在の重みが、めぐみが社長代行の念書に判を押そうとする瞬間にのしかかる。

 毅然と振る舞ってはいるが、今にも押しつぶされそうなめぐみの姿に心が痛んだ。そんな母を必死で支えようとする舞だって、まだ浩太の死を受け止めきれていない。自宅の靴箱を開けると、浩太の革靴にふと目が止まる。浩太はかつて、人工衛星の打ち上げ計画に関わっている会社の工場を見学した後、玄関でこの革靴を丁寧に磨いていた。レベルの差を見せつけられ、落ち込みそうになる自分を奮い立たせるために。

「一歩ずつ登っていったら、いつかは山の頂上にたどり着ける」

 向かい風にも負けず、一歩ずつ前に進んでいく父の背中を、舞は子どもの頃から追いかけてきた。でも、その背中はもう見えない。「お父ちゃん、もうおらん」という舞の震える声が、崩れ落ちる身体が、浩太の不在を容赦なく突きつける。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

関連記事