『天使にラブ・ソングを2』はなぜ愛され続ける? 原題『Sister Act』から紐解く

 12月9日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で、映画『天使にラブ・ソングを2』が放送される。

 12月2日には、前作にあたる『天使にラブ・ソングを…』が放送され、そのときもSNSを中心に大きな盛り上がりをみせた。また、12月から2023年1月にかけて全国各地で上演される舞台版も大きな話題を呼んでいることが象徴的なように、同シリーズは、約30年近くも前に公開された映画であるにもかかわらず、今もなお根強い人気を誇っている。まさに、時代を超えて愛され続けている名作だ。

 『天使にラブ・ソングを2』について詳しく紹介する前に、まずは先週放送された前作『天使にラブ・ソングを…』の振り返りから。主人公は、クラブ歌手のデロリス(ウーピー・ゴールドバーグ)。ある殺人事件の現場を目撃したことで、ギャングに命を狙われるはめになってしまったデロリスは、警察に相談して、重要参考人として法廷に立つまでの間、修道院に身を隠すことになる。型破りな性格のデロリスは、はじめこそ、何よりも厳粛さを重んじる修道院の生活に馴染めず、修道院長(マギー・スミス)と衝突を繰り返していたが、次第に、シスターたちとの交流を通して成長を重ねていき、それまで堅苦しい伝統に縛られていた修道院全体にポジティブな変化を与えていく。

 『天使にラブ・ソングを…』の原題は『Sister Act』であり、これは、この物語の要となるシスターたちの聖歌隊によるパフォーマンスを指す。もともとデロリスが来る前まではバラバラで下手くそな合唱だったが、彼女の指揮によって次第にパフォーマンスに磨きがかかっていき、最後には、修道院を飛び出して、世の中から大きな注目を集めるポップアーティストへと成長していく。ここで面白いのは、デロリスとの音楽を通した交流によって、それまで禁欲的な生活を送ってきたシスターたちの内なる感情が発散されていくプロセスである。

 例えば、中盤、シスターたちが、デロリスを追って入り込んだクラブで、ジュークボックスから流れるポップミュージックに合わせて踊り始めるシーンはとても痛快だ。また、デロリスに自発性、積極性を刺激されたシスターたちが、ゴスペルを基調とした聖歌隊の歌唱に、オリジナルの要素として、軽快なリズムや踊りを嬉々として加えていく展開には、観ていて思わず心が踊る。そうしたシスターたちの姿を見て、音楽とは、本来これほどまでに自由で、楽しいものであることを再確認した人はきっと多いと思う。

 今回放送される『天使にラブ・ソングを2』も、そうした音楽の自由さ、楽しさをめいっぱい伝えてくれる物語となっている。前作から1年が経ち、シンガーとして大きな成功を収めたデロリスは、(『Back in the Habit』という原題のサブタイトルが示しているように)修道院長やシスターたちの懇願により、再び修道衣を身にまとうことになる。その懇願とは、まったく大人たちの言うことを聞かない社会奉仕先の高校の生徒たちを音楽の力で導いてほしい、というものであった。

 今作は、修道院の中の物語であった前作とは大きくテイストが変わり、デロリスが高校の音楽のクラスを担当する青春学園ものへとジャンルがシフトしている。まるで、かつての自分自身のように自由奔放な生徒たちに真摯に向き合いながら、一人ひとりの個性や才能を開花させていく展開がとても感動的で、そうしたプロセスからは、前作の経験を踏まえた上でのデロリス自身の成長も垣間見ることができる。

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