リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替わりでお届けする「週末映画館でこれ観よう！」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は友達の息子の将来の夢が「ザリガニになる」と聞いて応援したい大和田が『ザリガニの鳴くところ』をプッシュします。

『ザリガニの鳴くところ』

　「事件の真相は、初恋の中に沈んでいる」。そのキャッチコピーを読んでから『ザリガニの鳴くところ』を鑑賞したあとに真っ先に浮かんだのは、2021年の今頃に放送されていたドラマ『最愛』（TBS系）でした。

　ノースカロライナ州の湿地帯で、将来有望な金持ちの青年・チェイス（ハリス・ディキンソン）の変死体が発見される。容疑をかけられたのは、本作の主人公である少女・カイア（デイジー・エドガー＝ジョーンズ）。『最愛』でも、主人公の梨央（吉高由里子）が殺人事件の重要参考人になり、彼女の初恋の相手であり事件の真相を追う刑事・大輝（松下洸平）と、あらゆる手段で梨央を守ろうとする弁護士・加瀬（井浦新）の2人の男性が登場する。『ザリガニの鳴くところ』でも、青年・チェイスと、カイアが出会う心優しき青年・テイト（テイラー・ジョン・スミス）の2人の男性が登場する。そして、どちらの物語でも同じように噂話が先行して、彼女たちが疑われます。

　湊かなえ原作をドラマ化した『Nのために』（TBS系）や『最愛』など、恋愛とミステリーが絡み合う作品になぜこんなにも引き込まれてしまうのでしょうか。愛するが故に起きてしまう事件、または事件の犠牲になってしまう愛。「犯人は誰？」「真相は？」と探究心がそそられるミステリーと、切なくて心が温かくなる恋愛ドラマは、もしかしたら最強の組み合わせなのでは。また本作は舞台のほとんどが森の中。何が潜んでいるかわからない、突然何が出てくるかわからない、その舞台としての効果も相まって、どんどん引きこまれていくのです。