自身もファッションアイコンであるオダギリが手がけた『オリバーな犬』には、オダギリの美意識が色濃く反映されている。衣装や映像編集に加えて、作りたいものを作る姿勢は『濱マイク』と一致しており、地上波ドラマで異彩を放った同作の系譜にある。ミステリー／サスペンスの体裁を取りながら、事件解決そのものよりキャラクターや会話劇の洒脱さを重視している点でも両作は共通する。それらは作品中でも演者の力量が直接的に現れる要素である。

　『濱マイク』が当時の地上波ドラマに対する批評性を帯びていたように、『オリバーな犬』にはメタ的な言及が散りばめられており、作品を俯瞰する視点に貫かれているのも特徴だ。第6話終盤で展開されたキャスト総がかりの舞台シーンで、肝心のオリバーは小西と客席にいて、渡（仲野太賀）やマイケル（染谷将太）のソロパートにつっこみを入れる。この段階において、作り手は完全に視聴者と視点を共有している。ちなみに小西はドラマ中で神々𢌞の催眠術が効かない人間として描かれているが、このことは小西が動物的な嗅覚を持つオリバーに近いキャラであることを示している。

　オリバーが客席にいたわけはのちに明かされるが、作者の存在を強調することは、メタ視点を超えて作品の自由度を最大化するものと言える。オダギリジョーの奇想が爆発した『オリバーな犬』は、事ここに至って犬と創造主が一体であることを宣言したのである。

■放送情報
『オリバーな犬、（Gosh!!）このヤロウ』
NHK総合にて、10月11日（火）15:10～15:55再放送
出演：池松壮亮、オダギリジョー、永瀬正敏、麻生久美子、本田翼、岡山天音、玉城ティナ、くっきー！（野性爆弾）、永山瑛太、川島鈴遥、佐藤緋美、浅川梨奈、染谷将太、仲野太賀、村上虹郎、佐久間由衣、寛一郎、千原せいじ（千原兄弟）、河本準一（次長課長）、高良健吾、坂井真紀、葛山信吾、火野正平、竹内都子、村上淳、嶋田久作、甲本雅裕、鈴木慶一、國村隼、細野晴臣、香椎由宇、渋川清彦、我修院達也、宇野祥平、松たか子、黒木華、浜辺美波、濱田マリ、シシド・カフカ、河合優実、佐藤玲、風吹ジュン、松田龍平、松田翔太、松重豊、柄本明、橋爪功、佐藤浩市
脚本・演出・編集：オダギリジョー
制作統括：柴田直之（NHK）、坂部康二（NHKエンタープライズ）、山本喜彦（MMJ）
音楽：森雅樹
主題歌：「The Hunter」（EGO-WRAPPIN’）
制作：NHKエンタープライズ
制作・著作：NHK、MMJ
写真提供＝NHK