永瀬廉、『新・信長公記』で魅せた憂いと愛嬌 実力派俳優との共演でさらなる飛躍を期待
「貴様は誰だ」という台詞を話す姿に、憂いを感じたのは初めてかもしれない。『新・信長公記 ~クラスメイトは戦国武将~』(読売テレビ・日本テレビ系/以下『新・信長公記 』)で、主役の織田信長を演じる、King & Princeの永瀬廉を見て思った。
本作の「織田信長」は、歴史ドラマとは少し趣が違う。『新・信長公記』の舞台は、遠い未来の2122年。戦国オタクの博士が作り出した武将たちのクローンが、高校のクラスメイトとなる“天下獲りエンターテインメント”。織田信長に豊臣秀吉、武田信玄など名だたる武将のクローン高校生たちが、学園の天下統一を奪い合う。
非現実的な設定で乙女ゲームのようなタイトルだが、武将たちが集まるクラスの、たった1名の女子生徒は、日下部みやび(山田杏奈)。この時代では明治時代以前を歴史で教えることはなくなり、みやびはいわゆる“歴女”で、戦国武将へ憧れを持ち、クローン武将たちにも驚き感嘆するなど、視聴者に近い存在だ。
永瀬廉は、2021年に連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)で、主人公・百音(清原果耶)の同級生・りょーちんこと及川亮を演じたのが記憶に新しい。東北の震災で母を失い仮設住宅で暮らし、浅野忠信演じる父親が自暴自棄になるといった、つらい境遇にある青年を好演。オーディションを経て出演をつかみ、中学生から漁師に、大人の男性へと成長するまでの10年間を、ゆっくり時間をかけて演じて見せた。
「こんなにジャニーズのキラキラオーラを消せるのか」「りょーちんってキンプリの人だったの?」との声も多く、表情と視線で気持ちを表現する演技が印象的だった。内側に抱えていた暗い部分を見せたときの、押さえていながらも心情が伝わる視線の演技や、永瀬のウェット感のある声が、特に印象に残っている。
永瀬廉は、ジャニーズ事務所に2011年12歳のときに入所している。関西ジャニーズJr.を経て、「King & Prince」のメンバーとして2018年「シンデレラガール」でデビュー。「王と王子様」というグループ名に負けない“華”を持ちながらも、それを出さずに気仙沼で漁師を続ける苦労人の青年を違和感なく演じていた。
ドラマや映画で幅広く活躍しており、2019年に映画『うちの執事が言うことには』で初主演を果たした。さらに、自転車競技に熱中する高校生の青春を描いた大人気コミックを映画化した『弱虫ペダル』では、第44回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。友だちがおらず、内気な高校生、小野田坂道にそっくりな外見で、ロードバイクの練習を重ねた役作りに原作ファンも納得の仕上がりだった。