コスパ良くエンタメを楽しんでいるつもりが、結果として自分たちの未来に生まれたであろう楽しみを潰しているということ。時間をかけずに物事に取り組むことが良しとされるあまりに、自分の行動の先に何が待っているのかを思考する時間まで削ってしまっていないだろうかと、問われるような気持ちになった。

　そして、ようやく罪悪感に駆られた遼平が山田恭兵監督に謝罪するも、監督は静かに怒りを見せながら決して許さない。その現実的で冷ややかな展開も、遼平の鈍った想像力が刺激される結果となったように思う。

　誰かの痛みを想像すること。何が正義で何が罪なのか、その曖昧なボーダーに思いを馳せること。それらは一見すると時間の無駄かもしれない。けれど、私たちの心が動く瞬間というのは、いつだって曖昧で、他人から見ればきっと無駄なことばかりだ。人生は効率よく、絶対に外すことなく進めることなんてできないのだから。そんなことに気付かせてくれるのも、またエンタメのなせる技なのだろう。

　罪を犯した人も、傷つけられた人も、その再出発をサポートした人も、命ある限り人生は続いていく。映画とそのファスト映画に関わった人すべてが苦しい結果に終わり、石子と羽男も空を見上げるしかなくなったのだが、やはり日々は続くのだ。

　石子を悩ませる潮法律事務所の経営状況はまだまだ頑張らなければならないだろうし、羽男も優秀な家族にしんどさを感じているのが伺えた。そして、どうやら次回は検事の姉・優乃（MEGUMI）と直接対決となりそうだ。果たして、その先に待っているものは？　想像力を働かせて、この作品を余すことなく楽しみたい。

■放送情報
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます？ー』
TBS系にて、毎週金曜22:00～22:54放送
出演：有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、小関裕太、さだまさし
脚本：西田征史
演出：塚原あゆ子、山本剛義
プロデュース：新井順子
編成：中西真央、松岡洋太
音楽：得田真裕
主題歌：「人間ごっこ」RADWIMPS（Muzinto Records / EMI）
製作：TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト：https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/
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