岸井ゆきの×浜辺美波、再共演で変化した関係性 『やがて海へと届く』での経験を語る
彩瀬まるの同名小説を『四月の永い夢』『わたしは光をにぎっている』の中川龍太郎監督が映画化した『やがて海へと届く』は、突然消息を絶った親友の不在を受け入れられずにいる主人公が、深い悲しみを抱えながらも前に踏み出そうとする姿を見つめる、喪失から再生へと向かう物語だ。そんな本作で映画初共演を果たしたのは、岸井ゆきのと浜辺美波。2020年夏に放送された連続ドラマ『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)以来の共演となった2人に、初の中川組での経験やお互いの存在について話を聞いた。【インタビューの最後には、コメント動画&サイン入りチェキプレゼント企画あり】
岸井「好きな思い出はいくらでも愛せるタイプ」
ーーお二方とも中川龍太郎監督とは今回が初タッグとなります。
岸井ゆきの(以下、岸井):今回のお話をいただく前から中川監督の作品は観ていたのですが、それとは別に、映画業界の中で中川監督は“すごくアツい人”だという噂を聞いていました(笑)。お話をいただいたときも、台本と一緒にご自身が書かれたエッセイなど、中川監督自身にまつわるものをたくさん送ってきてくれて、「噂に聞いていた通りアツい人だ!」と思いました(笑)。
浜辺美波(以下、浜辺):私は中川監督と一番最初にお話ししたときに、その人柄に不思議な奥深さを感じました。中川監督の映画づくりが親友の喪失から始まっていることや、映画を撮るときは辛いことが多いという話をしてくださったので、私も何かを取り繕うことが全くありませんでした。そういう意味ではすごく心がほどかれたなと思います。今までお会いしたことがないようなタイプの監督で、女優と監督というよりは本当に「人と人」として接しながら作っていった感じがします。
ーー岸井さんは突然いなくなった親友を想い続ける主人公・真奈、浜辺さんはそのいなくなった親友・すみれを演じられています。
岸井:私は真奈の12年間を演じているんですけど、真奈は大切な思いをずっと抱えながらその12年間を生きているんですよね。私も、好きな思い出はずっと抱え込んで、いくらでも愛せるタイプなので、そういう部分では私は真奈と似ているところがありました。真奈はそれを他人にも要求しちゃうところがあるので、そこはちょっと違うんですけど、大事なことをずっと持ち続けていることは、演じる上でベースとして持っていました。あと、大学生ってまだ語る言葉を持っていないと思うので、うまく更生できない感じはちょっと考えながら演じました。
浜辺:すみれは逆に、何かを積み重ねると言うよりも、一つひとつ捨てていく選択をしていく子だったので、削ぎ落されていく感覚がありました。あとは映画冒頭のアニメーションがあることが私には大きくて、そこに向かっていく上で、矛盾がないような役作りができたらいいなと思っていました。
ーー真奈とすみれのように会いたい人に会えない状況というのは、いまの時代より共感できますよね。
岸井:本当にそうですね。昔、何をしゃべったか覚えていないぐらいの無駄話を友達として、終電を逃してしまうこととかが結構あったんです(笑)。当時は「何やってるんだろ。もっと早く帰りたかったー」という感じで結構落ち込んでいたんですけど、いま思うとその“無駄”がなかなかできなくなっちゃって。それが悲しくて切ないですね。もっと無駄なことをしたいなと思います(笑)。
浜辺:私はずっと閉鎖的なので……(笑)。コロナになる前からずっとマスクを着用していましたし、あまり外にも出ないので、そういうことをほとんど感じたことがなくて……。ただ、閉鎖的な人が開放的になるチャンスはかなり絞られてきているので、この状態が続くと、本当にずっとこのままになってしまうのかと……。そう思うと怖いですし、それは“悪”だなと思います。
ーー(笑)。それはどこかのタイミングで見直さないといけないかもしれないですね。
浜辺:そうですね。ただ、連れ出してくれる人もいなければ、そういう出会いもないので……。よくないですね(笑)。私はこの閉鎖的な生活に満足しちゃっている自分が逆に嫌です。
岸井:満足しちゃってるんだ(笑)。