『カムカムエヴリバディ』小さなほころびが大きな亀裂に 安子編と重なるるい編の負の連鎖

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)が第12週に入ってから、物語全体に立ち込めていた不穏な空気。我々視聴者は、人によってはトラウマと例えてもオーバーではない、安子編でのラストの悲劇的な結末を乗り越えてきたからこそ、るい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)にはささやかな幸せを祈る一方で、この悪い予感が向かう先を覚悟してしまっていたのかもしれない。

 東京から大阪へと戻って来た錠一郎は、るいに「奈々(佐々木希)のことが好きになった。そやから……お前とは終わりや」と別れを告げる。

 東京にある笹川プロダクションの社長宅でデビューに向けて練習してきた錠一郎だったが、トランペットを吹く時にだけ思うように体が動かないという原因不明の症状にかかり、コンサートはおろか、デビューも中止に。季節は約束のクリスマスをとうに過ぎ、ベリー(市川実日子)の大学卒業を間近に控える春になろうとしていた。

 その間、るいは東京にいる錠一郎へと手紙を書き続けていた。笹川(佐川満男)の娘・奈々を通じて渡される手紙に錠一郎は返事が書けなかった。自分とるいを繋いでいたトランペットが吹けなくなったことを知らせることができなかったのだ。クリスマスに予定されていたデビューコンサートで、るいが東京に来た時に一緒に暮らす部屋を探そうーーそんな約束をしていた未来もあった。「あなたはそれでいいかもしれないけど、女はそれじゃ納得できないのよ」と奈々に釘を刺され、錠一郎はるいの居候する竹村クリーニング店に電話をするが、一言も言い出せぬまま受話器を切るのだった。

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