『カムカムエヴリバディ』悲しみの連鎖が安子たちの運命を狂わせる 気になる安子編の結末

 安子(上白石萌音)とロバート(村雨辰剛)が一緒にいるところを見てしまった勇(村上虹郎)は、安子の心が自分にないことを知り自暴自棄になる。「やっと進駐軍に、兄さんを殺した国に勝った思うたら」。勇の独白を聞いた雪衣(岡田結実)は「無様ですね」と一言。「無様でけっこうじゃ」。立ち去ろうとする雪衣の手を握る勇。「赤チンくれえでこの傷が治るなら、世話あねえ」。「ひでえ人じゃね、たった今も安子さんのことを思うとるくせに」。互いに見合ったまま目をそらさない2人。雪衣の顔がわずかに動いた。

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第37話。悲しみの連鎖が安子たちの運命を狂わせていく。「たちばな」を再建するため、資金の借入れに向かう日。放心状態の算太(濱田岳)はフラフラと通りを進む。ガラス戸に映った自分は借り物のスーツに身を包み、不得手な家業を継ぐために人から金を借りに行こうとしている。一国一城の主になり、ささやかであっても幸せな生活を送るという人生設計は、その日の朝、勇の部屋から出てくる雪衣を目にした瞬間、崩れ落ちた。何もかもバカバカしくなって、人目も気にせず笑いだした。

 勇の申し出を断ったからには、これ以上、雉真家に居続けるわけにいかない。算太を助けられるのが「たちばな」の味を継いだ自分だけであると安子はわかっていた。安子の心中を察した千吉(段田安則)はあえて引き留めなかった。その代わり「じゃけどそりゃあ、るいたあ暮らせんいうことじゃ」と告げる。るい(古川凛)の額にある傷の治療代は、安子の商いでとても賄えるような額ではなく「雉真繊維の力がなかったら治してやれん」。雉真の子として生きていくことが、るいにとって最良の選択であると千吉は語る。

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