眞栄田郷敦とウォーズマンの重なった道 『キン肉マン TLL』で綾野剛にぶつけた役者論

「さっきから僕、ずっとカンペ無視しててすみません」

 『キン肉マン』の実写映画化を目指す役者たちの奮闘を描いた『キン肉マン THE LOST LEGEND』(WOWOWプライム)。その第5話(放送済み・WOWOWオンデマンドにて配信中)に印象的なシーンがある。実写映画のプロデューサーでロビンマスク役を兼任する綾野剛とウォーズマン役を務める眞栄田郷敦がエンタメ論や役者論を語り合うシーンだ。これはいわゆるドキュメンタリードラマ。だから台詞が一言一句細かく決められてはいないものの、当然、大まかな話の流れなどはある程度決められていて、監督から指示があるはずだ。だが、話が白熱したためか、郷敦は綾野にカンペを無視して聞きたいことをどんどんと聞くようになっていたのだ。その会話には間違いなく“真実”が含まれていた。

※以下、ネタバレを含みます。

 2人の関係性はまさにウォーズマンとその師・バラクーダ(ロビンマスクの別の顔)そのものだ。

 ウォーズマンといえば読み切り短編マンガ「ウォーズマン・ビギンズ 仮面の告白!の巻」という名作がある(『キン肉マン』37巻収録)。49ページにわたりウォーズマンの出生の秘密が描かれている。ウォーズマンことニコライ・ボルコフの父ミハイル・ボルコフは「ミサイルマン」の名で活躍した超人レスラー。チャンピオンとなる実力者であったにもかかわらず「もっと強くなりたい」とさらなる強さを求め機械超人研究者に身を捧げ、機械超人になってしまう。その結果、生まれたニコライは機械超人と人間のハーフに。その境遇で苦しめられることになる。

 そして運命に導かれるようにロボ超人レスラーになったウォーズマンはやがて「終生のライバル(=キン肉マン)を倒してくれる」レスラーを探していたロビンマスクの目にとまり、バラクーダを名乗るロビンと師弟関係を結ぶことになるのだ。そんなバラクーダの特訓を受けたウォーズマンは、「超人オリンピック」でキン肉マンと激闘を演じていく。

 役者に殉じるように生きた千葉真一を父に持ち、同じ役者の道を歩むことになった郷敦の境遇はこのウォーズマンの生い立ちとどうしても重ねてしまうし、バラクーダが攻撃の極意として教える「天使のように細心に、悪魔のように大胆に」という言葉を改めて読み返すと、あたかも演技論のように思えてくる。

 今作の中で郷敦とミート君役の玉城ティナは、『キン肉マン』の実写化を企画するとキン肉マン役の俳優が失踪してしまったりして消えてしまう「キン消し」の呪いを調べるため、過去に制作された(されようとした)日本や香港などの『キン肉マン』モチーフの作品を探っていく。これらがいちいち細部にこだわられていて秀逸で可笑しい。しかもその“関係者”として出てくるのも過去に千葉真一と実際に一緒に映画をつくっていた人物だったりするのも刺激的だ。

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