『二月の勝者』星野真里演じる母の“狂気”が家族を変える 中学受験における夫婦のあり方

 「中学受験は課金ゲーム」。ソーシャルゲームに夢中な父親の心をくすぐってイニシアティブを握り、特別講習への「課金」成功に導いた「二月の勝者ー絶対合格の教室ー」(日本テレビ系)第4話。今回は黒木(柳楽優弥)だけではなく、講師・桂(瀧内公美)のテクニック、何より母・香織(星野真里)の狂気ーーもとい勇気が、一つの家族を動かした。

 ゴールデンウィーク特別講習を全生徒に受けさせるよう、講師たちに指示した黒木。5万円超の費用がかかる講義をノルマとすることに疑問を感じる佐倉(井上真央)に対し桂は、中学受験は親の膨大な出資の上に成り立っているという現実を叩きつける。確かに、出資する価値のある授業を行い、合格という対価を払う、それが塾講師の仕事なのだろう。香織に、ゴールデンウィーク特別講習の受講を強く勧めることができる桂には、塾講師としての矜持が感じられた。

 「解けそうな問題から解く」という佐倉の指導方法で模擬テストを繰り返すものの、一向に伸びないRクラスの成績。そこで黒木は、例外としてある秘策に出る。それは、問題用紙の後ろ半分を破り捨て、前半の問題のみ解答させるというもの。これにより、Rクラスの成績下位生徒の得点は即日、向上を見せる。後半の問題を捨てた理由の一つは、生徒から焦りを取り除くこと。黒木は、Rクラスの生徒の答案から、ケアレスミスの多さを感じていた。限られた時間のなか、白紙だらけの答案とにらみ合いながらでは、焦る気持ちに追われてミスが増えるのは当然のこと。ならば最初から半分で良いと余裕を与えることで、本来持っている力をきちんと発揮できれば、自然と得点は伸びる。結果、生徒自身のモチベーションアップにも繋がるだろう。「できない子どもはいない」、第2話でそう言い切った黒木の言葉を思い出す。

 自分に期待できるか否か、それは何事においても重要だ。勇人(守永伊吹)の場合、特別に頑張ったわけではなく、ただ問題が半分になっただけで飛躍的に点数が伸びた。目に見える結果は即効性のあるものだ。単純に嬉しく、「できる」という自信にも繋がる。自分にもできるのではないか、頑張らなくてもできたのなら、頑張ればもっとできるのではないか。誰もが持つ“成果を得たいと思う心”に、スイッチが入った。

 勇人は帰宅早々、テストの成績があがったことを父・正人(塚本高史)に報告する。正人の反応はあっさりしたものだったが「今年はディズニーランド、我慢してもいいよ」と、ゴールデンウィーク特別講習に参加したい旨をそれとなく明かす。やる気に満ちた表情で、威風堂々と階段をのぼり、宿題というミッションに向かう勇人の後ろ姿はまるで勇者。「がんばれがんばれ受験生」「まけるなまけるな受験生」。同シーンで流れた歌も印象的だった。ドラマ冒頭で使用されているチャイムのハーモニーを含め、ポップなサウンドトラックが本作の「超現実的要素」をマイルドに、そしてポジティブに仕上げている。

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