『じゃない方の彼女』山下美月の誘惑にジタバタな濱田岳 不倫の沼にハマる男女を好演
大学の准教授・雅也(濱田岳)と一緒に、天然魔性系女子大生・怜子(山下美月)にドギマギさせられ、彼女の沼にハマりそうになる『じゃない方の彼女』(テレビ東京系)。
「偶然が3回続くと奇跡が起きるんですって」という前振りから帰り際に急にほっぺにキスをしたかと思いきや「何もないと3回の偶然がもったいないかな、って思って」なんて言葉をさらりと口にする。たまたま一緒になった盆栽教室で雅也に“まーくん”という大学内とは異なる特別な呼び名を与え、食事を断れば「間をとって連絡先だけ交換しましょ」と半ば強引にスマホを取り上げいつの間にやらLINEのやり取りが続く。気がつけばどんどんどんどん彼女のペースに巻き込まれていく。からかわれているだけかと思いきや、30分は行列に並ばねば手に入らない人気のクッキーをお礼に手渡す律儀さも時に顔を覗かせる。“じゃない方”の人生が長い雅也にとって、怜子はあまりに捉えどころがなくさぞかし刺激的で魅惑的な、正に自分とは交わることなどないと思っていた“高嶺の花”的な存在だろう。
今のところ、破滅的な危なっかしさもドロドロも皆無でなんだかクスッと笑える“不倫コメディ”という新たなジャンルにまで昇華されている本作だが、容赦なく降りかかる様々な誘惑や難解な状況にジタバタする雅也の情けなくも滑稽で、愚かしいけれどどこか憎めないさまを濱田岳が好演している。濱田は本当に気持ちいいまでに“振り回される”“試される”側の役どころがよく似合う。所々に差し込まれる漫談師に扮した濱田が、一人ノリツッコミし葛藤する様も楽しい仕掛けだ。
いつも大本命に選ばれてきたに違いない怜子が、“じゃない方”側にいる雅也に寄せた好意を「僕に家族がいるから、こういう個人的なやり取りは良くないと思う」「教員と学生との距離感は大事」なんていうあまりにありきたりな“正しい”だけの言葉で片付けられ“じゃない方”に追いやられそうになる、そんな世紀の大逆転の瞬間が見られるのも本作の面白いところだ。皆、誰かにとっての“じゃない方”であり、“である方”だという表裏一体の事実を逆説的に示してくれる。
怜子役の山下美月も、状況的に“ハニートラップ”にも捉えられかねないようなキャラクターながら、魔性の中にも確かに存在する迷いのない素直な恋心や相手へのストレートな興味を覗かせ、より一層怜子を魅力的な存在にしてくれている。怜子に振り回されてしまう雅也の気持ちにも納得できてしまう。