『ボイスII』正義を問う最終回に “白塗り男”久遠京介が流した涙の意味を探る

 樋口が示した予想外の行動に、久遠は明らかに動揺し、混乱した。母親と引き離された、忘れることのできない“あの瞬間”、久遠にかけるべきだったという言葉が、樋口から語られる。心がほどけるかのように、久遠の瞳に涙が溢れ、こぼれていく。あのとき、その言葉をかけていたら「久遠京介」は生まれなかったかもしれない、違う未来があったのかもしれない。憎しみに囚われ棒に振った久遠の人生、大切な者を傷付けられ失った樋口の今ーー互いの遅すぎる後悔が交差していた。

 久遠が“選択”した最期。俺以外にお前は殺させないーー確かな執念の一方で、樋口が信じた「母親が注いだ愛情」、それが久遠を突き動かしたのかもしれないとも思う。元はといえば久遠が招いた事態であり、命を投げ出すことは決して美徳ではない。けれど久遠は最期に、投げやりになったのでも、あてつけや計算でもなく、ただそこにいる罪なきものの命を救おうとしたのだと思いたい。樋口たちが日々、命を懸けて守りたいとする「人間」とはそういうものであると、誰もがほんのひとかけらの“善”の心を失ってはいないはずと、そう信じたい。

 久遠が絡んだ一連の事件で、多くの人が傷付き、悲しき犯罪者が生まれた。もう戻らない命もある。悲しみや憎しみは連鎖し、いずれ第2、第3の久遠が生まれるかもしれない。それでも樋口らECUは、目の前にいる人々が救いを求めるかぎり、その声が聞こえるかぎり、警察官としてやるべきことを全力でやりぬく。正義とは何か、善悪とは何かに安易な答えを出さない結末にこそ、本作が投げかけるメッセージを感じた。

■配信情報
Hulu、Tverにて配信中
『ボイスII 110緊急指令室』
出演:唐沢寿明、真木よう子、増田貴久、宮本茉由、中川大輔、藤間爽子
原作: Based on the series “Voice”,produced and distributed
by Studio Dragon Corporation and CJ ENM Co., Ltd,and written by Jinwon Ma.
脚本:浜田秀哉
音楽:ゲイリー芦屋
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:尾上貴洋、能勢荘志、戸倉亮爾 (日テレアックスオン)
演出:大谷太郎、久保田充、西村了(日テレアックスオン)、茂山佳則(日テレアックスオン)
制作協力:日テレアックスオン
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/voice2/
公式Twitter:@voice_ntv
公式Instagram:@voice.ntv

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