しかし、本作で本当に描かれるのは「自分の人生のコントロールを一度失い、自由になること」。決めつけた日々の生活や価値観から一歩踏み出した先にある、第二の人生に向かう大人たちの挫折と、喪失と、希望の物語なのです。何事にも結果や代償が伴うのが人生。実験を通して様々な出来事を経たマッツ演じる主人公がラスト、主題歌「What a Life」にのせて見せてくれるダンスには心が震えてしまいました。おそらく、初めて役者の演技に純粋に感動して涙を流したかもしれません。そのカタルシスは、主人公と同じように喪失を乗り越え、本作を娘に捧げたヴィンターベア監督、そしてそれを間近でともに経験した俳優陣だからこそ表現できたものなのでしょう。酒類提供停止の日々が続きますが、代わりにぜひ映画館に彼らと乾杯しに行ってみてください。

■公開情報
『アナザーラウンド』
新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほかにて公開中
出演：マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、マグナス・ミラン、ラース・ランゼ、
マリア・ボネヴィー
監督：トマス・ヴィンターベア
配給：クロックワークス　
2020年／デンマーク／スクリーンサイズ1：2.0／DCP5.1ch／117分／英題：Another Round／PG-12
(c)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.
公式サイト：anotherround-movie.com
公式Twitter：@KlockworxInfo
公式Instagram：@KlockworxInfo