『ブラック・ウィドウ』配信で6000万ドル超え 初のプレミアアクセス興収発表が意味するもの

 7月8日から映画館上映、7月9日からディズニープラス プレミアアクセスでの配信が開始された『ブラック・ウィドウ』。そのオープニング興収が明らかになった。ディズニーは、この週末でのプレミアアクセス(約30ドルの追加支払い)のみの興収が6000万ドルを超えたと発表。さらに、全米の劇場興収は8000万ドルという新記録を達成し、米国外では46の地域から7880万ドルという結果になった。つまり、劇場公開累計の約1億5880万ドルにプレミアアクセスを加え、オープニング週末興収はトータルで2億1500万ドルを超えるという、大快挙である。もちろん、パンデミックが始まって以来の数字だ。

 どれくらいすごいかというと、公開当時もいい成績を出していた『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が現在米国で“公開7週目”で、国内興収1億5000万ドル。そして6月25日に公開された『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』のオープニング興収は木曜日の先行上映を含め、国内で7000万ドルであった(現在は世界興収含め、トータル5億5000万ドルに近づいている)。国内オープニングの数字などから、パンデミック始まって以来のヒット作として劇場を盛り上げているこの2作品の成績と比べても、『ブラック・ウィドウ』がトップであることがわかるだろう。

 そして前述の2作品と『ブラック・ウィドウ』の決定的な違いは、『ブラック・ウィドウ』は劇場公開と配信を同時に行っているという点だ。『クワイエット・プレイス』も『ワイルド・スピード』も劇場公開のみである。そこも非常に興味深い。なにより、これまでディズニーは同じような形で『ハミルトン』や『ソウルフル・ワールド』などを公開してきたが、プレミアアクセスの数字を発表したのはこれが初めてなのである。そして、その数字は劇場での興収に“劣る”ものであったことがわかった。つまり、これまでの業界人による「配信と同時公開をすることによって劇場興収が奪われるのではないか」という懸念を払拭する結果でもあるのだ。それを裏付けるために……つまり、今後も配信&公開を同時にしていくことの印象を上げるために初開示したのかもしれないけれど。

 『ブラック・ウィドウ』はとにかく不遇というか、これまでパンデミックの状況を鑑みて度重なる公開延期を繰り返してきた。劇場公開と配信を同時に行った点も、コロナ禍を考えた上での最終決定だ。そしてようやく公開されたことについて、主演およびエグゼクティブ・プロデューサーを務めたスカーレット・ヨハンソンは以下のようにコメントしている。

「私は全てがなるようになると考えています。そして実は、今が本作を公開するうえで最適な時期だったと思います」

 また、共演したフローレンス・ピューも彼女に同意し、以下のようにコメントを残した。

「もし安全だと思えるなら、できれば映画館に戻ってほしいです。本作は大きなスピーカーや、大爆発が映える大画面で鑑賞するとより壮大に感じられる映画……そう、まさに皆さんが恋しがっていたような作品だから」

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。InstagramTwitter

■公開情報
『ブラック・ウィドウ』
映画館&ディズニープラス プレミアアクセスにて公開中
※プレミアアクセスは追加支払いが必要
監督:ケイト・ショートランド
出演:スカーレット・ヨハンソン、フローレンス・ピュー、レイチェル・ワイズ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2021

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