尾野真千子が語る監督・石井裕也の存在 『茜色に焼かれる』は「今しか撮れない」作品に
『舟を編む』『町田くんの世界』『生きちゃった』の石井裕也監督の新作映画『茜色に焼かれる』が公開中だ。現在のコロナ禍の日本を舞台に傷つきながらも自身の信念の中でたくましく生きる親子の姿を描く人間ドラマだ。
今回、リアルサウンド映画部では、多難の時代に逆風を受けながらも前向きに歩もうとする母親・良子を演じる尾野真千子にインタビューを行った。石井組への信頼や、コロナ禍を経て感じていることを明かしてくれた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
石井裕也監督による気迫の台本
――台本を読まれてどんな感想をお持ちになりましたか?
尾野真千子(以下、尾野):石井さん……。石井裕也ってすごい人なんです(笑)。たぶん、きっと誰でも、この台本を読んだら、すぐにやりたいって思うだろうなと。私としては、その監督の作品を取られたくないなと思って。
――今回は、石井監督からオファーを受けたと。
尾野:まず始めに、台本を「今撮りたいんです」と持ってこられて。「だろうな」と思いました。この作品は今しか撮れないし、このリアルな気持ちのまま撮れるし、自分にとってすごい映画になるかもしれないと思って、この人について行こうと思いました。
――おっしゃる通り、コロナ禍の今を赤裸々に描いていて、観終わるとどっと疲れが押し寄せてくるような感覚すらありました。
尾野:すいません(笑)。本当に気持ちが熱い台本でした。本当に石井さんにしか書けない台本だなと感じたし、よくこの母親像を、男性の石井さんが書けたなとすごく感動したんです。確かに、ちょっと特殊な母親のように描かれているかもしれないけど、意外とやってみたら、そこまで特殊じゃない。意外と理解ができる母親で。熱がすごく伝わった台本でした。
――刺さるようなセリフのオンパレードでした。
尾野:どれも刺さるでしょ。石井さんのすごいところで、どのセリフを撮っても、どこも省けないセリフなんです。自分にも刺さるし、相手にも刺さる言葉をどんどん生み出してくる。それが、石井さんがすごいところだと思ったんです。どの作品もそうなんですけど、「見どころどこですか?」とか、「選びなさい」って言われるのが苦手で。作品に対して、全てのシーン、全てのことが、自分が全力で演じたからどこって言えない。やっぱり、自分たちがやっている身だから選べないですよね。
――実際に、和田庵さん演じる息子・純平との親子関係も本作の重要なポイントかと思いますが、和田さんの子供としての存在感はいかがでした?
尾野:和田くんはすごく面白かったです。繊細で、表現も豊かだったし、自分の子どもとして、ちゃんと愛せた気がします。