『コントが始まる』里穂子の過去が明らかに 菅田将暉、有村架純らの“含みのある表情”

 マクベスのコントは、ネタを書く春斗(菅田将暉)の人生が色濃く投影されている。そうであるから、日々にどれだけ苦しいことがあろうと、それはコントとして笑いに還元されるだろう。いや、マクベスのコントはもはや、“笑い”にすら執着していないように見える。インスパイア元がわからなくなるくらいキャラクターはぶっ飛んでいるし、展開は過酷だ。まるで「そんなはずじゃない現実」を「怒り」と「祈り」と一緒に混ぜ合わせて丸く焼いたかのように、具だけむき出しのいびつな状態のまま調理されている。

 相変わらず笑いにくいマクベスのコント「奇跡の水」に、中浜里穂子(有村架純)は「なぜ惹かれるのか」。5月1日に放送された『コントが始まる』(日本テレビ系)第3話のミソは、いや、タコは、その部分だった。妹のつむぎ(古川琴音)は、1年半前に一流企業を辞めた姉が徐々に元気を取り戻しつつあることに安心しながらも、マクベスにハマる理由がまったくわからないようだ。飼っている金魚3匹にマクベス3人の名前を付けている姉を見てゾッとしたり。それはたしかにすごく怖い。

 真面目であるがゆえに損をしてしまう人がいるのだとすれば、こんなに哀しいことはあるだろうか。妹のつむぎから見て、里穂子は「当たり前のように幸せな未来を掴むんだろうな」と思わせる順風満帆ぶりだった。しかしつむぎが知らない間に、里穂子は付き合っていた人に捨てられ、会社ではうまく責任を背負わされ摩耗してしまっていたのだ。「わたしが頑張るからダメなのか。頑張り方が間違ってるのか」と当時を回顧する里穂子。ずっと自分の頑張り方を信じてきたがゆえに、結果的にそれが否定されたことも、頑張れなくなった今もすべて悔しかった。

 瀕死状態にまで陥った姉の傷心に驚きながら、風呂に入らせ、ご飯を与え、太陽光を浴びせ、と寄り添い続けてきたつむぎ。

つむぎ「お姉ちゃん、なんで『奇跡の水』のコント好きなの?」
里穂子「あーあれ? どんどん手が付けられなくなっていく兄を、諦めない弟の必死な姿が妙に愛おしいんだよね」

 里穂子は「奇跡の水」のコントに、自身の苦悩と、そばにいてくれている妹の存在を重ねて見ていたのだろう。そして、「奇跡の水」は例に漏れず実体験をもとにしているから、中浜姉妹の人生の苦悩は春斗と兄(毎熊克哉)の物語にも接続する。里穂子が過去の話をしているとき、春斗は無言の苦い表情のなか、同じく真面目ゆえに苦しんだ兄の姿を思い浮かべていたはずだ。

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