『クルエラ』主演のエマ・ストーン カメレオン女優としての歩みと快進撃

 先日公開されたディズニー実写映画『クルエラ』の予告編が話題になっている。『101匹わんちゃん』の悪役、クルエラ・ド・ヴィルのオリジンを描く本作の予告編は、なんといっても主演を務めるエマ・ストーンのビジュアルが目を引く。ディズニーヴィランズ随一のファッションセンスの持ち主であるクルエラを実写で見事に表現し、不気味な笑い声からその怪演を期待する声も多い。

『クルエラ』特報|2021年5月28日(金)公開

 エマ・ストーンといえば、やはりアカデミー賞主演女優賞を獲得した『ラ・ラ・ランド』のイメージが強い人も多いだろう。しかし彼女はこれまでさまざまなテイストの作品に出演し、演技派として実力を認められている。今回は、そんなエマ・ストーンのこれまでの出演作とともに、そのカメレオン女優ぶりを振り返っていこう。

苦労のすえ映画デビューでヒロインに抜擢

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 2004年、オーディション番組で役を勝ち取り芸能界入りしたエマ・ストーンは、その後テレビ映画やテレビドラマへのゲスト出演からスタートした。2007年にはテレビシリーズ『Drive(原題)』にレギュラー出演していたが、番組自体が7話で打ち切りになってしまう。彼女の女優人生は決して順調な滑り出しというわけではなかったようだ。しかし同じ年、ストーンは『スーパーバッド 童貞ウォーズ』で映画デビューを果たす。高校卒業を目前に、同級生が開くパーティで童貞を捨てようと奮闘する男子高校生たちが巻き起こすドタバタコメディだ。彼女が演じたのは、ジョナ・ヒル演じる主人公セスがあこがれるジュールズ。ヒロインである彼女はイケてる人気者だが、取り巻きを連れて歩くいわゆる“女王蜂”タイプではない、まともで優しい女の子だ。ストーンはその嫌味のない存在感でジュールズを好演した。彼女の低音のハスキーボイスは、落ち着いた少し大人っぽい雰囲気のジュールズにぴたりとはまった。

 その後出演した作品数は少ないが、彼女はそのほとんどでヒロインや準主役級の役を演じている。たとえば『ゾンビランド』(2009年)では、ゾンビにあふれかえる世界でたくましく生きる美人詐欺師姉妹の姉ウィチタを演じた。一筋縄ではいかない魅力を持つ彼女を、ストーンは荒廃した世界を生きる者としての覚悟とともにコミカルに、そしてチャーミングに演じている。

初主演映画でゴールデングローブ賞にノミネート

 そして2010年、彼女に転機が訪れる。『小悪魔はなぜモテる?!』で主演に抜擢されたのだ。地味な女子高生オリーブは、小さな嘘から学校一の遊び人だと勘違いされ、次第に変わっていく周囲の反応に苦しめられるようになる。ナサニエル・ホーソーンの『緋文字』をモチーフにした本作で、ストーンは明るく振る舞いながらも内心傷ついていくオリーブを丁寧に演じた。意地っぱりで人に優しく、そのために自分を傷つけてしまったオリーブは、現代のティーンらしい方法で事態を打開する。ストーンの演技は高評価を受け、ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされた。

 翌2011年に出演した『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』は、これまでとは打って変わって人種差別を題材にした社会派のヒューマンドラマだ。オクタヴィア・スペンサーにアカデミー賞助演女優賞をもたらした本作は、60年代の公民権運動を背景に、黒人メイドたちの体験をまとめて出版しようとする女性スキーターの奮闘を描く。コメディでチャーミングな魅力を発揮していたストーンは、本作では瞳に強い意志を宿し、メイドたちとともに戦う白人女性という難しい役柄を見事に演じてみせた。ここで彼女は新たな境地への足がかりを得たのだろう。

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