『おちょやん』千代が「カフェー・キネマ」で再出発 杉咲花の目から感じるヒロインのたくましさ

 京都にたどり着いた千代(杉咲花)は「カフェー・キネマ」で働くことになった。NHKの連続テレビ小説『おちょやん』が第5週初日を迎え、口が達者で機転がきく千代らしいたくましさが伝わる回となった。

 道頓堀から飛び出した千代は、行く当てもなく汽車に乗り、京都へとやってきた。住む場所も持ち合わせもない千代が口入れ屋から紹介されたのは、女優を目指しながら働く女給たちがたくさんいる「カフェー・キネマ」だった。

 「これは旅立ちだす」というシズ(篠原涼子)の言葉を思い出し、「カフェー・キネマ」に向かう決心をした千代は凛々しい表情で向かう。行く当ても住むところも食べるところもない、千代が置かれている状況は絶対説明的だ。しかし、シズの言葉を思い出し、意を決したように前を見据えた千代の目が、「千代なら大丈夫」という気にさせてくれる。そんな杉咲の目から、千代の幼少期を演じた毎田暖乃が見せた力強さを思い出した。毎田は、勝気だが家族を思う繊細な心を持ち、亡くなった母を思いながら前を向いて生きていこうとする千代を演じてきた。杉咲の目からふっと感じられた幼い千代の姿に、第1回から一貫して、千代はどんな境遇にあっても必死に生き抜こうとするたくましいヒロインなのだと思い知らされた。

 芝居茶屋「岡安」や「福富」にも個性豊かな登場人物が揃っていたが、「カフェー・キネマ」も個性派揃い。店長の宮元(西村和彦)は活動写真(映画)好きで、自分が監督、店員が助監督のつもりでおり、千代を困惑させる。千代と同部屋の真理(吉川愛)は女優を目指しており、千代曰く「えらくかわいらしい」女性なのだが、富山なまりが強く、インパクト抜群。洋子(阿部純子)をはじめとする女給たちも、真理の解説を聞く限り、一癖も二癖もありそうだ。

 だからといって、「カフェー・キネマ」での生活に不安を感じることはない。物語終盤、千代は酔っ払った客を見事に追い払い、宮元に代わって場を収めていた。お茶子として働いてきた経験が活きるとなれば、ここでの経験もまた彼女の人生に大きく影響を与えるはずだ。

 また、宮元と面接していたとき、千代の視線の先には活動写真で活躍していると思しき高城百合子(井川遥)の姿が。彼女が女優を続けていると知った千代の嬉しそうな表情が心に残る。彼女との再会にも期待が高まる。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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