『DAU. ナターシャ』新場面写真公開 ソ連秘密研究施設を再現したセットの数々が
2021年2月27日公開の映画『DAU. ナターシャ』より、新たな場面写真が公開された。
ロシアの奇才イリヤ・フルジャノフスキーは処女作『4』が各国の映画祭で絶賛を浴びると、“史上最も狂った映画撮影”と呼ばれた本プロジェクトに着手。それは、いまや忘れられつつある“ソヴィエト連邦”の記憶を呼び起こすために、“ソ連全体主義”の社会を完全に再現するという前代未聞の試みだった。オーディション人数約40万人、衣装4万着、欧州史上最大の1万2千平米のセット、主要キャスト400人、エキストラ1万人、撮影期間40カ月、35mmフィルム撮影のフッテージ700時間……莫大な費用と15年もの歳月をかけて完成させた。
本作は、その膨大なフッテージから創出された映画化第1弾であり、ランダウが勤めていた物理工学研究所に併設されたカフェのウェイトレス、ナターシャが主人公となる。本作でスカウトされた新人ナターリヤ ・ベレジナヤが演じるナターシャの目を通し、観客は独裁の圧制のもとでたくましく生きる人々と、美しくも猥雑なソ連の秘密研究都市を体感していくことになる。
公開された場面写真では、登場人物の衣装をはじめナターシャが働くカフェに取り揃えられた当時の食品やキッチン用品などあらゆるものを徹底して再現した様子や、ナターシャがカフェの外で涙をこらえ切れずうずくまる場面などを捉えたもの。また、セットの上部にはす、ソ連国旗の標章として使われていたマルクス・レーニン主義の共産主義のシンボルでもあった“鎌と槌”も切り取られている。
ウクライナ・ハリコフの廃墟となったプールの敷地内に建設された秘密研究施設には撮影のピリオドごとに異なる時間軸が設定され、本作では1952年という設定に。1952年はスターリンが死去する前年にあたり、プーチン現ロシア大統領の誕生年でもある。ナターシャを演じたベレジナヤによると、撮影が始まる際に全ての参加者に対して当時の歴史背景についての説明が行われ、当時の実際の席事や研究所内で起こったことを記した新聞も置かれていたという。さらに、「研究所の理論部門で定期的な政治会議も行われ、私達はとても長い会議に臨み、そこではスターリンの演説が読み上げられました。当時、ソ連のどの工場や機関でも行われていたように」と驚きのエピソードを明かした。
フルジャノフスキー監督は、ソ連全体主義を呼び起こさせるともいえるこのプロジェクトに取り組んだ理由について、「バビ・ヤール(1941年に、 ホロコースト における1件では最大の犠牲者を出したと言われる虐殺が起こったウクライナの地名)もグラーグ(ソ連時代の 強制労働収容所・矯正収容所 の管理部門の名称だが、ソ連の奴隷労働システムそれ自体を表す言葉としても使用される)も、最近起こったことです。ソヴィエト連邦以降の世界には、犠牲者または加害者、あるいはその両方がいない家族は存在しません。それこそがソヴィエトのトラウマです。ソヴィエトが残した病は記憶喪失です。誰もが覚えておきたいことだけを覚えています。この記憶喪失を克服しない限り、それは何度も何度も繰り返されます。意識的に覚えていないのかもしれませんが、魂は覚えています。反省し二度と繰り返さないための努力をしない限り、何度でも同じ経験をすることになるでしょう」と語っている。
■公開情報
『DAU. ナターシャ』
2021年2月27日(土)より、シアター・イメージフォーラム、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
監督・脚本:イリヤ・フルジャノフスキー、エカテリーナ・エルテリ
出演:ナターリヤ・べレジナヤ、オリガ・シカバルニャ、ウラジーミル・アジッポ
撮影:ユルゲン・ユルゲス
配給:トランスフォーマー
2020年/ドイツ、ウクライナ、イギリス、ロシア合作/ロシア語/139分/ビスタ/カラー/5.1ch/原題:DAU. Natasha
(c)PHENOMEN FILMS
公式サイト:www.transformer.co.jp/m/dau/
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