竜星涼&犬飼貴丈、“2大ヒーロー”が拓いた世界 『ぐらんぶる』は“教育映画”の側面も!?

 本作の見どころは、やはり竜星と犬飼という二人の俳優とともに過ごす時間である。とにかく振り切れたハイテンションで、「バカ」としか言いようがないのだが、思い返してみれば彼らは、元・ヒーローだ。竜星は『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013年〜2014年/テレビ朝日系)で“レッド”として主役を、犬飼は『仮面ライダービルド』(2017年〜2018年/テレビ朝日系)にてタイトルロールである“仮面ライダービルド”役で主役をと、彼らはそれぞれ往年の“2大ヒーローシリーズ”で主演を張っていたのである。今作『ぐらんぶる』での彼らの姿を見た“ヒーローっ子”たちには気の毒な気もするが、これぞ俳優という職業。そういった意味で、この二人が主演というだけで今作は、「教育映画」の側面をも持ち合わせているように思えてくる……。近年、両者ともども誠実な役どころを演じている印象が強かっただけに、今作で拓けた世界というものもあるのではないだろうか。


 また本作では、乃木坂46の与田祐希が映画初出演を果たし、ヒロインに扮しているさまにも注目である。演技者としてはキャリアが浅く、他のキャストと比べればその佇まいは、少々ぎこちなさを感じさせはする。しかしこれが、彼女が演じる千紗という人物の“クーデレ”なキャラクターにマッチしているのだ。

 さて、主人公の二人が“ダイビングに目覚める”まで、とにかく時間のかかるダイビング映画『ぐらんぶる』。クライマックスまで、離島からの脱出劇を繰り返し、最後の最後に海底に広がる新たな世界を彼らは知る……というのが本作のオチだ。公開延期の末、このタイミングでの公開となった本作だが、竜星涼や犬飼貴丈の奮闘は、ままならないこの夏を映画館で堪能させてくれるものに奇しくもなったのである。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

※高嶋政宏の「高」ははしごだかが正式表記。

■公開情報
『ぐらんぶる』
全国上映中
主演:竜星涼、犬飼貴丈、与田祐希、朝比奈彩、小倉優香、石川恋、高嶋政宏
原作:井上堅二・吉岡公威『ぐらんぶる』(講談社アフタヌーンKC刊)
監督:英勉
脚本:英勉、宇田学
主題歌:sumika「絶叫セレナーデ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作プロダクション:THEFOOL
配給:ワーナー・ブラザース映画
製作:映画「ぐらんぶる」製作委員会
(c)井上堅二・吉岡公威/講談社 (c)2020 映画「ぐらんぶる」製作委員会
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