『アシガール』はジュブナイルドラマの傑作! 黒島結菜が中心にいることで生まれた説得力

 10代の若者を主人公にして若者に向けて作られたジュブナイルドラマが好きだ。学校を舞台にした物語で恋や友情や青春を描くのが定番だが、そこにSFやファンタジーの匂いがあれば最高である。2017年にNHKで放送され、現在はドラマ10(金曜22時)枠で再放送されている『アシガール』は、ジュブナイルドラマの傑作で毎週楽しみにしていた。

 本作は、戦国時代にタイムスリップした女子高生・速川唯(黒島結菜)を主人公にしたラブコメディ。足が速いことだけがとりえの唯は、その才能を持て余しており、本気で打ち込める何かを求めていた。そんなある日、天才的な頭脳を持つ引きこもりの弟・尊(下田翔大)が作った、懐刀を模したタイムマシンを起動させてしまい、戦国時代にタイムスリップしてしまう。

 少年のような唯は唯之助と名乗り、足軽として行動するが、そこでイケメンの若君・羽木九八郎忠清(健太郎、現・伊藤健太郎)と出会う。若君に一目惚れした唯は、百姓として働きながら若君に仕えようと四苦八苦する。戦国時代と現代を往復しながら(タイムマシンは満月の夜だけ使用できる)、若君のいる羽木家の滅亡を防ごうと唯は奮闘するのだが、同時になんとか若君の側にいようとする健気な姿が描かれる。

 唯を演じる黒島は少年のような素朴な少女で、80年代の原田知世を彷彿とさせる。原田の出演したジュブナイルSFの名作映画『時をかける少女』を2016年にリブートしたドラマ版『時をかける少女』(日本テレビ系)で黒島は主演を務めていた。他にも数々の学園ドラマやSFドラマに黒島は出演しており、2010年代のジュブナイルドラマや映画にはなくてはならない存在だった。

 黒島はシリアスとコミカルの間を綱渡りする演技が絶妙で「高校生の弟がタイムマシンを作ってしまう」というような無茶な世界観も、彼女が中心にいると説得力を感じてしまう。こういうジュブナイル的な世界を舞台にすると水を得た魚のように生き生きとしている。

 一方、若君を演じる健太郎も完璧だ。クールな若君は態度こそ(若殿様ゆえに)偉そうだが、嫌味な感じが全くないという愛嬌のある若君を的確に演じている。そんな若君のチャーミングさがもっとも現れていたのが、第6話だろう。怪我をした若君を治すために唯は若君を現代に送り込むのだが、現代にやってきた若君はTシャツにGパンという現代的な服装を着こなし、引きこもりの弟・尊とすぐに仲良くなる。この二人の凸凹コンビがまた素晴らしく、イケメンの若君が活躍するだけの現代学園ドラマを、もっと観たかったなぁと思う。

 また、この回は、尊だけでなく、唯の父母もあっさりと若君を受け入れるところが面白い。この二人は唯が戦国時代から帰ってきた時もタイムスリップして戦国時代に行ったことをあっさりと受け入れるのだが、この距離感はとても現代的だと思う。

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