UPLINK・浅井隆が考えるコロナ禍以降の映画館 「オンライン上映と共存するために」

 東京渋谷と吉祥寺、今年オープン予定の京都と3つの映画館を運営する「UPLINK」。自社配給のアート系作品から、シネコンなどでの上映が終わった準新作まで、多様な映画を上映する映画館としてはもちろん、ギャラリー、カフェレストラン、DVD・書籍などを販売するマーケットも備えた“カルチャー”の発信地として、多くのファンに愛されている。

 しかし、アップリンク渋谷・吉祥寺は、5月19日現在、新型コロナウイルス禍による都知事の要請により、休館を余儀なくされている。そんな中でもミニシアターの存続のために、2016年末からスタートしたオンライン映画館「UPLINK Cloud」やそのプラットフォームを用いたオンライン先行上映など、新たな形の収入源を模索している。リアルサウンド映画部では、UPLINK代表の浅井隆氏にインタビュー。コロナウイルス禍の影響、今後に向けた施策、新たな映画館の形まで話を聞いた。

映画館のビジネスモデルを考え直さないといけない

アップリンク渋谷

ーーアップリンク渋谷・吉祥寺は4月8日より休館を余儀なくされています。「ミニシアター・エイド」のクラウドファンディングが3億円(5月14日時点)を越え、政府からの休業補償などもありますが、今後の運営の目処としてはいかがでしょうか?

浅井隆(以下、浅井):単刀直入に申し上げると、アップリンクの規模が渋谷に加え、吉祥寺、京都と大きくなったこともあって非常に厳しいです。渋谷と吉祥寺の家賃だけで月間500万円以上、さらに借金の返済、リース代、社会保険料、税金なども加われば相当な額になります。もちろん、「ミニシアター・エイド」の支援は本当に有り難いですし、休業補償で一部補える部分はありますが、それだけでは休業が維持できるのも数カ月というのが実情です。緊急事態宣言の解除、および、これからの映画館運営にどんな条件が求められるのか、注視しているところです。

ーーアップリンクをはじめ、全国のミニシアターが大きな危機に直面していると。

浅井:ミニシアターという文化を感傷的に語るか、ビジネスとして語るかでも変わってくると思うんです。もちろん、ミニシアターが担ってきた文化的貢献は間違いなくありますが、“思い”だけではどうにもならない。「助成金でなんとか来月まで維持できる」という状態ならば、持続可能な文化活動とは言えない。映画ビジネスで一番最初にお金が入るのは映画館であり、そこから映画監督や制作会社、配給会社にお金が回っていく。文化活動を維持するためにも、映画館がビジネスとして成り立たなければ始まらないわけです。アップリンクは劇場運営とともに、配給業務、およびカフェや書籍などの販売も含めて、さまざまビジネスを展開してきましたが、今回の事態を受け、映画館のビジネスモデルを改めて考え直さないといけないと思っています。

ーー映画館で映画を上映することができないいま、新作映画が配信で公開されるなど、オンラインもひとつの収益場所となっています。アップリンクは、2017年の時点でクラウドサービス「UPLINK Cloud」をスタートさせていました。

浅井:クラウドサービスが展開できるのも、アップリンクが配給会社として自社の作品があるからです。コロナウイルス禍の影響を受けて、今回、2,980円で3カ月60本以上見放題プランも取り入れましたが、その成果もあって見放題の売上げとしては成功しています。新作映画の配信レンタルは大体200円から400円。アップリンクの場合は、全部観るとすれば1本あたり約50円であり、4、5本観れば元が取れる。加えて配信レンタルの期間は48時間が多いですが、アップリンクの場合は3カ月のゆとりもある。その点で試しに入ってみようと思ってくださる方が多かったのかと思います。加えて、5,000円コース、10,000円コースの寄付込みプランにも多くの方が申し込んでくださっており、大変感謝しております。アップリンクが制作、権利を持っている作品全てなので、ある意味過去の作品に助けられているとも言えます。

「UPLINK Cloud 60本以上見放題プラン」の作品の一部

 ただ、これは配給会社だからできる試みであり、多くのミニシアターでは同じようにはできません。その点では、東風さんが中心となってはじまった【仮設の映画館】がひとつの救いになるかもしれません。オンライン上に映画館を設置し劇場も実際と同じように収益を得られる仕組みであり、形だけで言えば実際の上映と同じ形になる。その成果に注目したいと思います。

ーー今後、劇場上映よりもオンライン上映がメインになる可能性も、業界全体では考えられますか?

浅井:そうですね。オンライン鑑賞の敷居は、コロナウイルス禍による外出自粛の影響で大きく下がりました。新作がオンラインでも観ることができるのであれば、劇場より自宅を選ぶ観客も増えるように思います。そもそも映画上映の料金は、コンテンツの制作費をどう回収できるか、というのが前提にあるわけです。だから、ビジネスの視点でみれば、製作者側が映画館ではなくオンラインで回収できると判断すればそちらに移行する。1本1,900円という料金形態も変化するかもしれません。

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