ポン・ジュノ監督が『パラサイト 半地下の家族』に込めたリアリティ 社会との繋がりは必然に

「私たち人間は、適度にいい人であり、適度に悪い人でもある」

ポン・ジュノ監督

ーー貧富の差を描いた作品だと、富を得た人たちが悪者であるか、貧しい人たちが狂気に陥るかが王道パターンですが、この作品はそのどちらとも言えず、根っからの悪人は出てきません。

ポン・ジュノ:現実的でリアリティのあるものを描きたいという思いが強くありました。私自身もそうですが、私たち人間は、適度にいい人であり、適度に悪い人でもある。明確に天使か悪魔かを分けることはできません。実際に私たちの人生がそうであり、私たち自身がそういう存在であるというリアルさを込めたかったのです。お話いただいたように、この映画の中に悪党や悪魔はいないですが、結果的にある結末に辿り着きます。その理由は何なのか? そして、その責任はどこにあるのか? それらの問いを、自分自身にも繰り返し投げかけていました。その答えが、まさにこの映画が伝えようとしている、深いメッセージでもあるのです。貧しい人たちのことを、暴走したり爆発したりしやすい存在だとする見方もありますが、僕は逆だと思います。裕福な人たちこそ、暴走しやすい存在である。国やシステムといったしっかりとした統制がなければ、裕福な人たちこそ暴走しやすい存在になってしまう。その様子は、アダム・マッケイ監督の『マネー・ショート 華麗なる大逆転』やマーティン・スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でもよく描かれていましたが、やはりしっかりとした公的な領域での、または市民社会による統制がないといけません。それが欠如すると、ドナルド・トランプのような存在が国のトップに立ってしまうという状況が生まれてしまうのです。

ーーあなたの作品はどれも社会との繋がりがとても強いですが、そのような状況を少しでも変えるために、映画でできることを模索している面もあるのでしょうか?

ポン・ジュノ:必ずしも映画が世界を変えられると考えているわけではありません。私は、映画が面白く、そして美しくあることを最優先に考えています。ただ、映画が面白く、そして美しくあるためには、その中に生きている人間をしっかり描かなければいけません。ただ、人間をしっかり描くというのは、人間“個人”を描くということではなく、人と何かの“関係”を描くこと。なので、必然的に社会との繋がりも描くことになるのです。それでも私自身は、より独特で具体的な個人の物語を描きたいとも思っているので、常にそれは忘れないようにもしています。

(取材・文・写真=宮川翔)

■公開情報
『パラサイト 半地下の家族』
TOHOシネマズ 日比谷、TOHOシネマズ 梅田にて先行公開中
2020年1月10日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
監督:ポン・ジュノ
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:チョン・ジェイル
提供:『パラサイト半地下の家族』フィルムパートナーズ
配給:ビターズ・エンド
2019年/韓国/132分/2.35:1/英題:Parasite/原題:Gisaengchung/PG-12
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公式サイト:www.parasite-mv.jp

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