のんが明かす、3年間で芽生えた“開き直り”の精神 「今まで考えすぎていた」

「この3年で開き直ることができた」

ーーこの3年の間に、のんさんご自身にもいろんな変化があったと思います。

のん:私、すごく話し下手なんですけど、たぶん3年前とかは監督と話す時も緊張して言葉を選ぶのに必死で、ひとつの文章にすごく時間をかけて話していたんです。だけど、この3年で開き直ることができて……。

ーーどういうことですか?

のん:“のんが喋れない”ことをみんな知ってるんだって気づいた時に、「じゃあ何も考えずに、正しいことを言おうとせずに、いい言葉を絞り出そうとせずに、思いついたことをそのまま言おう!」って決めたんです。そうやって話し始めたら、すごくスムーズに会話ができるようになって。そこから、監督ともすずさんのことや作品のことなどをすごくフランクに話せるようになったので、その“開き直り”はかなり大きかったと思います。

ーー以前は考えるところでつまずいてしまっていたわけですね。

のん:そうですね。「これどういうこと言ったらいいんだろう……」とか、いま言ったら1番いい言葉を絞り出そうとしていたところがあったんです。でも、そこまで期待されてないなって(笑)。自分が無音を作ってたからなんですけど、期待されない状況ができたので、逆に気楽に話せるようになったというか。

ーーいや、みんな期待はしてると思いますけど(笑)。

のん:えー! また話せなくなっちゃう(笑)。

ーーでも、たしかにあまり話していただけないイメージだったので、結構驚いています。

のん:大丈夫ですか? よかった! 脊髄反射で話すようにしているので(笑)。

ーー(笑)。「開き直る」という言い方をされていましたけど、それは、音楽だったり、絵だったり、映画監督だったりと、のんさん自身の幅広い活動にも反映されているんじゃないですか?

のん:たしかにそうですね。特に監督をやったのはすごく大きかったです。女優だけをやっていた時は、リテイクになったり、もっとこうしてと言われたり、監督がイライラしてたりするのを見ると、「私、そんなダメな演技してたのかな」とか、「なんでそんなにイライラしてるんだろ」と、ぐるぐる考えちゃっていたんです。だけど、実際に自分が監督をやってみたら、映像の中のことしか考えられなくて。誰がどうとかそういうことに考えが及んでいないことに気づいて、今まで考えすぎてたんだなって。考えすぎなくていいんだと思えるようになって、すごく楽になりました。

ーー監督を経験したことによって、役者としても変化が生まれたと。

のん:はい、めちゃくちゃやりやすくなりました。自分の中でそれが一番大きかったっていうくらいです。今までネガティブに考えてたんだなぁって。

ーーそれは大きな変化ですよね。来年春にはヒロイン役として出演された『星屑の町』の公開も控えていますが、実写作品に出演するのんさんを観たいという人はたくさんいると思います。

のん:求めていただけているというのはすごく嬉しいです。女優としてデビューして、女優でやってきたので、自分の中ではそこが揺らいでる気は全くないんです。これからも女優でやっていくつもりなので、それを求めていただけているのは、自分としてもすごく嬉しいし、ありがたいし、頑張りますという気持ちですね。

ーー期待しています。最後に、『この世界の片隅に』、そして『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』はのんさんにとってどのような存在になりましたか?

のん:これから役者をやっていく中で、欠かせない作品になりました。お受けする時から、これから先に出会えるか出会えないかわからないぐらいすごい作品だとビビッときたので、実際に参加できたことがすごく嬉しくて嬉しくて。自分の中で本当に特別な、忘れられない作品になりました。

(取材・文=宮川翔/写真=服部健太郎/動画=映像企画MOVE-ON)

■公開情報
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』
テアトル新宿、ユーロスペースほかにて公開中
声の出演:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、牛山茂、新谷真弓/花澤香菜/澁谷天外(特別出演)
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊)
監督・脚本:片渕須直
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル
後援:呉市・広島市・日本赤十字社
製作:2019「この世界の片隅に」製作委員会
(c)2019こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会
公式サイト:ikutsumono-katasumini.jp

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12月31日(火)

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