『IT/イット』完結編はなぜ長尺になったのか? ホラー描写とテーマの関わりから考える

 本作では、大人になったビル(ジェームズ・マカヴォイ)が、ベストセラー作家で映画の脚本も書いているという設定。だが結末に必ずビターなテイストを入れるため、大勢の読者に「オチはいまいち」だと指摘されている。そして、原作者スティーヴン・キングもまた、本作にアンティークショップの店主としてカメオ出演し、ビルに対して同じような指摘をするのだ。

 じつは原作では、本作でハッピーエンドを迎えるキャラクターの一人が、悲しい境遇に陥る結末が用意されている。本作がそれを却下したのは、その結末を回避することで、ルーザーとして生き延びている人たちに勇気を与えたいという判断があったためであろう。そして、原作を書いた頃の自分自身を見つめるキングも、このような役回りを引き受けているという事実から、“文学とは苦いものを含んでいるものだ”という考えを持っていた当時の自分について、「必ずしもそうではないよ」と、アドバイスしたかったように見えるのである。時間を経て作品を作り直す意義、続編を作る意義が、ここにしっかりと存在している。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』
全国公開中
監督:アンディ・ムスキエティ
原作:スティーヴン・キング
脚本:ゲイリー・ドーベルマン
出演:ビル・スカルスガルド、ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャスティン、ビル・ヘイダー、イザイア・ムスタファ、ジェイ・ライアン、ジェームズ・ランソン、アンディ・ビーンほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
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公式サイト:http://itthemovie.jp
公式Twitter:https://twitter.com/IT_OWARI

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