『スカーレット』切ない佐藤隆太の置き手紙 丁寧な心理描写が視聴者の心を掴む

 『スカーレット』(NHK総合)第5週「ときめきは甘く苦く」では、喜美子(戸田恵梨香)の出会いと別れ、そしてほろ苦い恋愛が描かれる。

 圭介(溝端淳平)は、あき子(佐津川愛美)の喜美子への嫉妬を理由に荒木荘から出ることを決めた。同時に、圭介へ密かに思いを寄せていた喜美子の初恋も終わりを告げる。圭介が好きだったおはぎを食べる喜美子。圭介との思い出と涙が溢れる、ほのかにしょっぱいおはぎだった。

 世界的な芸術家・ジョージ富士川(西川貴教)のサイン会に足を運んだ喜美子は、そこで「草間流柔道さん」こと、草間(佐藤隆太)と再会する。幼い喜美子に人との接し方、絵の夢を与え、草間流柔道の心得を教えた草間。何でも言い合える仲は、今でも変わらないが「小さい」と思えるほどに草間の元気はなくなっていた。

 その理由は、終戦後に離れ離れになっていた妻・里子(行平あい佳)が、別の男性と店を開くという夢を叶えていたから。満州から帰った草間は必死に生死も分からない妻を捜し続け、見つけたと思いきや別の人と暮らしているとは、なんとも皮肉な話だ。草間流柔道を独自に昇華し、荒木荘の人々に伝える喜美子は、草間に心が負けていると鼓舞し、里子の食堂に行くことを説得する。

 食堂に入店する草間と喜美子。草間の険しい顔を見るや否や、全てを察する里子。ここでのシーンにほとんど会話はなく、一方通行の言葉とそれに対する各々の表情や行動が心理描写となっていく。

 何があっても黙っていることを条件についてきた喜美子だったが、嘘がつけず挙動不審で草間の後ろの席に座る。2人が頼んだメニューは、焼飯。「ふぅー」と焼飯を平らげる喜美子に対して、草間の皿にはほとんど手付かずの焼飯が残っている。赤い夕日がすっかり沈み、店内はもう薄暗い。里子から喜美子に渡されたサービスの飴。思い立って渡された2つ目の飴は、里子からの間接的な草間へのサインだ。焼飯を残したまま、立ち上がる草間。里子はすでに「(お会計は)ご一緒でいいですか?」と聞いている。90円に100円を支払い、里子から10円札を受け取る草間。しかし、里子は一切、草間の目を見ようとはしない。

 そこに横切って食堂に入ってくる親子の常連客。「里子ちゃん、つわりはどう?」。この一言に、草間と喜美子に動揺が走り、やがて切なく、諦めにも似た表情へと変わっていく。とぼとぼと帰路に着く2人。その頃、残された焼飯を片付ける里子は、草間が読んでいた新聞紙の下に、署名された離婚届と「幸せに 宗一郎」と添えられたメモを見つけていた。

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