『監察医 朝顔』フジテレビの“時代に寄り添う”手腕が発揮? 高視聴率を獲得した理由とは
先週最終回を迎え、本日9月30日に特別編が放送されるドラマ『監察医 朝顔』(フジテレビ系)。原作の同名漫画では、主人公の母親が阪神淡路大震災で亡くなっているが、ドラマでは、それを東日本大震災で行方不明と置き換え、また、朝顔(上野樹里)を新人の監察医として描くなどのいくつかの変更も見られた。
全11話で視聴率2桁を維持、平均視聴率は12.6%という高視聴率を獲得した本作(数字は関東地区、ビデオリサーチ調べ)。これまでの「月9」のテイストとは異なる作風だが、今期ドラマの中で非常に高い満足度を獲得した作品のひとつと言えるだろう。高い評価を得た理由について、ライターの木俣冬氏はこう分析する。
「東日本大震災から8年という月日が経ちましたが、8年経ったからといって解決していないこともまだまだあります。“忘れてはいけない”という空気が今の日本にはあって、『監察医 朝顔』は、そんな日本人の気持ちに寄り添う内容になっていたのではないでしょうか。未曾有の大震災であり、震災後すぐにはショックが大きくてなかなかドラマの中では描けなかったり、また、過去に震災があったことを示唆するようなドラマはありましたが、主人公自身も被災者であり、家族の1人が今も見つからず、それが今の自分の生き方に影響を与えているというところまで踏み込んだ作品は、本作が初めてだったのではないでしょうか」
朝顔が新人法医学者として遺体と真摯に向き合うパートと、父・平(時任三郎)、パートナー・桑原(風間俊介)とともに生活を送り家族を築くパート。本作は2つの軸でストーリーが展開されたが、それも成功の要因のひとつだ。
「法医学はじめ、医療ものや刑事もののドラマが今流行っていますが、その多くは、働いている職場の様子が中心になっていて、主人公の生活面や家族についてはあまり触れないことがほとんどです。その中で、本作は仕事と生活を半分半分で描いており、新しい試みだったのではないでしょうか。
朝顔が新人監察医からスタートし、結婚して子供が生まれて成長して……とドラマの中で実はかなり長い時間が経っています。日常シーンの取り入れ方や、“女性の主人公が家庭を維持しながら仕事している”という点も含めて、朝ドラ的な印象もありました。特におっ!と思ったのは、朝顔が入籍前に、三つ指ついて父親に『今まで大切に育ててくれて、ありがとうございました』と言ったシーンです。以前『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)という書籍を書いた時に『なつぞら』の脚本家でもある大森寿美男さんに『朝ドラにルールはあるんですか?』と聞いたら、『嫁ぎの儀式は必須』とおっしゃっていて。もともと、朝ドラは日本にある家庭の儀式的なものを取り入れてきましたが、ドラマの潮流としても、今ホームドラマに回帰してきている部分があるかもしれません。
今までの月9は食事のシーンがあっても、外でみんなが集まって溜り場的なところで一杯やるっていうのが多かったんですが、今はみんなあまり外に飲みに行かず、家でみんなでご飯食べましょう的な流れがある。そんな世間の流れに敏感なところもフジテレビらしさではないでしょうか。たくさんの人の心に応えるものを作ろうとする姿勢を感じました」