『腐女子、うっかりゲイに告る。』脚本家・三浦直之が目指す、新しいボーイ・ミーツ・ガールの物語

「削る作業は心苦しかった」

ーー三浦さんが考える小説、演劇、ドラマそれぞれのフォーマットの違いとはなんでしょう?

三浦:小説は「書かれたことしか読めない」というのが原理としてあると思います。「ここにAがある」というのと「ここにBがある」というのを同時に読めない、このことが小説だと思うんです。でも、映像はそれを同時に表現することができる。小説と演劇の違いに関して言うと、小説は読みながら、森のシーンがあれば森が読者の頭に浮かんでくるじゃないですか? 演劇の時は、この想像力が2段階になっていて。観客は、舞台にある偽物の森をみて、さらにその上で本物の森を想像する。僕が演劇が好きな理由は、この「二重の想像力」です。

ーー演劇とドラマの違いに関してはどうですか?

三浦:ドラマは、カットを割ることができるのと、シーンを飛ばすことができるのが大きいですね。演劇だと、毎回暗転して転換して……というのは繰り返せないから。演劇の台本を書く時は長回しのイメージで書くんです。ドラマや映画のような映像作品だと省略の技術が重要になると思いますね。

ーー普段からドラマは観られますか?

三浦:高校まではかなりテレビっ子だったんですが、一時期ほどは観なくなりました。母親もテレビが好きで、三谷幸喜さん、宮藤官九郎さんや野沢尚さんのドラマのシナリオ本が家に置いてあり、それを読んだりもしていました。今でも、好きな脚本家である坂元裕二さんや、木皿泉さん、宮藤さん、野木亜紀子さんの作品は観たりします。

ーー数多くの演劇の脚本を手がけられてきましたが、ドラマの脚本執筆は難しいですか?

三浦:難しいですね。勝手が違うなと思います。ドラマってリライトが多いんですが、僕はリライトがすごく苦手な作業なんです。

ーー『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』の脚本執筆で大変だった作業は?

三浦:削る作業ですね。浅原さんの言葉ひとつひとつが、いろんなことを思いながら書いている言葉だから。ファーレンハイトと純のやり取りは原作より短くしなければいけなかったんですが、2人のやり取りは作品においても重要なので、削る作業は心苦しかったです。

ーー撮影現場にも足を運びましたか?

三浦:7話の学校での演説のシーンの撮影にお邪魔させていただいたんですが、現場の雰囲気がすごく良くて、こういう雰囲気が作れているということはきっといい作品なんだろうなと思いました。三浦紗枝の演説を聞いているみんなを撮影していたんですが、モニターで見ている時に、エキストラの人たちも含めてみんなそれぞれ多様な聞き方をしていることに気づいて。あの時は感動しました。

ーー劇団ロロのメンバーである望月綾乃さんと亀島一徳さんも、三浦紗枝のBL仲間である姐さんとその彼氏・隼人として出演しています。

三浦:僕はわざと細かく言葉の言い回しを不自然にするのをよくやるんですが、ロロのメンバーはそのことへの理解が早いから、台本を読むだけで想定しているテンポがすぐに分かるんです。望月さんはちょっとヲタクっぽいところがあるから、姐さんの役が合うんじゃないかなと思ったし、亀島くんは根はいい奴だけど、少し言葉をぶっきらぼうに出すギャップが役にハマるといいなと思って執筆しました。

 純くんを演じた金子大地さんは、新鮮でしたね。声が素敵だから、抑えたトーンで言葉をポツポツと語るだけで説得力が生まれる。金子さんがバッっと感情を爆発させると胸に迫るものもあるし。一方の三浦紗枝を演じた藤野涼子さんも「いい子」というのが雰囲気からにじみ出ていて、そんな2人の関係性もよかったです。

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