『いだてん』綾瀬はるか×中村勘九郎の不器用な愛 笑顔溢れる“冷水浴”が話題に

 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第15回「あゝ結婚」が4月21日に放送された。兄・実次(中村獅童)に呼ばれて熊本に帰った四三(中村勘九郎)を待ち受けていたのは、スヤ(綾瀬はるか)との見合いだった。

 出会った頃から、お互いに淡い思いを抱いていた四三とスヤ。池部幾江(大竹しのぶ)と実次に押し切られる形で祝言をあげた2人だが、四三は4年後のベルリンオリンピックのことで頭がいっぱいだった。そんな四三の思いを受け止め、スヤは四三を東京へ送り出す。スヤを演じる綾瀬のこまやかな演技に注目だ。

 見合いの席に現れたスヤは凛とした表情をしていた。かつて東京へ向かう四三を自転車で追いかけたときのような溌剌とした印象はない。その表情からは、夫の重行(髙橋洋)を亡くしたという背景と幾江の思いに答えたいという意志が伝わってくる。だが、四三のことを見つめるときだけは、「池部家に嫁いだ」スヤではなく、「四三を想う」スヤに変わる。熊本に帰るや否や見合いをさせられ、激しく困惑する四三は「田んぼと嫁は別もんばい」とスヤとの結婚を拒絶するような発言をしてしまうのだが、スヤは四三の心中を察し、「金栗さんにもご迷惑のかかりますけん!」とその場を立ち去った。だが、スヤが決して縁談自体を拒否しているのではないと分かる。スヤの表情は険しいが、四三に対する敬意が伝わってくるからだ。

 また、スヤは四三に対する思いをはっきりと口にした。四三にあまり良い印象を抱かなかった幾江は「後継はこっちで探すばい」と話すが、スヤは「わたしは四三さんがよかです」「四三さんじゃなかったら、こん話ば終いです」と言う。その口調は柔らかだが、幾江の目をまっすぐ捉え、はっきりと言葉にするその姿からは、四三を慕い続けるスヤの強い思いが感じとれる。大竹演じる幾江も、自らの思いを包み隠すことなくはっきり伝えるキャラクターだが、綾瀬はスヤの幾江とは違った芯の強さを表現している。穏やかな性格でありながら思いが一切ブレないのは、スヤならではの特徴だ。

 だが、スヤも四三も、互いに好意を伝えるのは苦手なようだ。語り部の古今亭志ん生(ビートたけし)がツッコミを入れてしまうほど、新婚初夜の距離感はじれったい。スヤは四三と共に過ごせる日々が嬉しいと伝えるが、オリンピックで頭がいっぱいな四三は「何はさておきオリンピックだけん」とオリンピックへの思いを熱弁。このときスヤは、戸惑いにも悲しみにも見える表情を見せた。四三を尊重したい思いと四三に対する自身の思いの間で葛藤しているようだった。四三の言葉を飲み込むようにして受け止めたスヤは「だったらわたしも、何はさておきお義母さんです」と少し語気を強めて言った。自身を好いてくれている幾江に恩返ししたいと言う強い思いを、四三の熱弁に負けないぐらいの強さで伝えようとしたのではないだろうか。

 互いの思いを伝えるのは不器用な2人だが、心はすでに通じ合っているのだろう。1本の傘で2人寄り添って歩く姿はとてもたどたどしい。実次から「コッチコチ」と表現されるほど硬い雰囲気の2人だが、東京へ戻る四三を見つめるスヤからは強い愛情が表れている。四三もまた、遠のいていく船の上から、愛おしそうにスヤを見つめ続けていた。

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