ジョージ・クルーニー監督の作家性が光る いま語られるべき映画『サバービコン』のメッセージ

ジョージ・クルーニーとマット・デイモン

 そして、『ミケランジェロ・プロジェクト』などでも共演していた、本作の主演俳優マット・デイモンは、プライベートでもクルーニーとは親友関係にあり、同じようにリベラルな政治思想から、人権問題などについての活動をしている。彼らは、信念によって本作を作りあげているのだ。

 デイモンは役柄に合わせ、本作で体重をかなり増やして、父権的な父親像を体現している。クルーニーによると、現場でデイモンはスナックを食べ続け、みるみるうちに太っていったという。この役者根性が純粋な信念によるものだったのか、ただの食欲の解放だったのかは、本人にしか分からない部分ではある。

人種差別を作り出すものとは

 “New Kids in the Neighborhood”という、新興住宅地にアフリカ系の一家が引っ越してきた様子を描いた、ノーマン・ロックウェルの有名な絵がある。野球のグローブを持った黒人と白人の子どもたちが対峙している構図だ。それと呼応するように、劇中では、差別に遭うマイヤーズ家の幼い息子と、隣に住むロッジ一家の幼い息子が友情を深めていく姿が描かれる。

 本作のこの箇所は、まさにアメリカ人の多くが知っているその有名なイメージを基にしていると考えられる。この絵の最も興味深いのは、この後お互いが、仲良く遊ぶことができるのか、それとも断絶が生まれるのか、その直前の緊張を描いているところである。

 彼らの友情に障害があるとすれば、それは何なのか。何を倒せば人種間の垣根を越えることができるのか。本作のラストシーンは、シュールで過激な描写を含ませながら、その答えを表現している。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■リリース情報
『サバービコン 仮面を被った街』
DVD発売中

【商品仕様】
2017年/アメリカ/105分+特典映像/シネマスコープ/本編音声 1.英語 ドルビーデジタル 5.1chサラウンド 2.日本語 ドルビーデジタル 2.0chステレオ/字幕 1.日本語字幕/片面1層

【特典映像】
予告編

出演:マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザック、ノア・ジュープ、グレン・フレシュラー
監督:ジョージ・クルーニー
脚本:ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン ジョージ・クルーニー&グラント・ヘスロヴ
発売・販売元:TCエンタテインメント
提供:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
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