黒木華、なぜ監督たちから再起用される? 2018年出演作から考えるラブコールが絶えない理由

(c)2018「日日是好日」製作委員会

 日本映画界の重鎮である木村大作と小泉堯史がタッグを組んだ時代劇『散り椿』では、黒木の儚い表情がスクリーンに映え、『日日是好日』では故・樹木希林とともに心温まる掛け合いで魅せた。『億男』ではヒロインを務め、作品の根幹を成す、“お金”に関する問題を問いかけ、さらに、野村周平とのダブル主演を務めた『ビブリア古書堂の事件手帖』では、ミステリー、サスペンス、ラブストーリーといったジャンルを、品のある佇まいで越境し観客を導いた。そして、問題作の『来る』である。黒木が演じるのは、表向きは慎ましく穏やかな妻にして母親だが、徐々にその像が崩れていくという役どころだ。本作は三章立ての構造を持った作品で、彼女が中心に立つのは第二章にあたる部分。人間の心の“美醜”を掘り下げていく、大胆さと繊細さの同居した黒木の演技は、彼女の真骨頂だといえそうだ。

(c)2018「来る」製作委員会

 キャスティングは監督の一存ではなく、そこに関わる多くの人間の意向が反映されるのだろうが、この幅広いラインナップへの彼女の適応力の高さからは、再起用される所以や、作り手たちからの信頼度の高さがうかがえる。

 そしてもちろん、今年の活躍で忘れてはいけないのはが『西郷どん』(NHK)での西郷糸役だ。歴史ある大河ドラマでの大役を務めたことは、『真田丸』(2016)に続き、映画や民放ドラマだけでなく、より幅広い層からの認知度や支持を得ることにつながったのではないだろうか。気鋭の監督から巨匠まで、大女優とのやりとりから子役との掛け合いまで、多種多様な作品でまったく違う顔を見せる黒木華。2011年の映画デビューからまだ7年のキャリアにしてベテランの風格さえ漂う彼女こそ、現代トップ女優の一人とみて、誰も異論はないのではないだろうか。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『来る』
全国公開中
監督:中島哲也
脚本:中島哲也、岩井秀人、門間宣裕
企画・プロデュース:川村元気
原作:澤村伊智『ぼぎわんが、来る』(角川ホラー文庫刊)
出演: 岡田准一、黒木華、小松菜奈、青木崇高、柴田理恵、太賀、志田愛珠、蜷川みほ、伊集院光、石田えり、松たか子、妻夫木聡
製作プロダクション:東宝映画、ギークサイト
配給:東宝
(c)2018「来る」製作委員会
公式サイト:http://kuru-movie.jp/

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