裏表を巧みに演じる高橋一生が本領発揮! 『民衆の敵』藤堂誠の隠された素顔

 いよいよ『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』(フジテレビ系)が、次週で最終回を迎える。最終回の予告では、佐藤智子(篠原涼子) VS 藤堂誠(高橋一生)という構図での言い争いが確認でき、佐藤の「今まで騙してたってこと?」というセリフと、藤堂(誠)が父・英一朗と思わしき人物から「お前は一体何をしているんだ」と迫られるシーンがある。佐藤が市民から「民衆の敵」と訴えられるという幕引きで終わった第9話であったが、本当の“民衆の敵”は犬崎(古田新太)なのか。それとも、黒幕は藤堂という驚愕の結末となるのだろうか。

 他にも次回予告では、藤堂から佐藤への「綺麗ごとだけではダメなんです。あなたのやり方では限界があることが分かりました」「一人の幸せのためにみんなを犠牲にするなんておかしくないですか?」というセリフや、涙を浮かべた藤堂の表情も見える。このセリフから思い出されるのは、第9話で藤堂が映画『プライベート・ライアン』を例に挙げて話した「目の前の一人の影には見えない99人がいる」という話だ。『プライベート・ライアン』では、救出されるライアンを助けるために、たくさんの人が戦死する。ライアンに着目すれば感動的なストーリーだが、死んでいった兵士に着目すると理不尽な話である。これは『民衆の敵』で描かれる政治にも当てはまる。

 ニューポート建設は、犬崎派閥の隣接したアミューズメントパーク・あおばランドの構想発表により賛成派が多数となった。佐藤は、反対する漁業の声を直接聞いて回る。佐藤の考えは「目の前の一人ひとりを笑顔にすることによって、ゆっくりかもしれないけど、100人幸せにできないかな」という考え。言い換えれば、ライアン以外の全ての兵士も救おうということ。これまで藤堂は、佐藤のバディとして彼女を支え、考えを讃えてきた。しかし、藤堂にも芯となる自身の考えがあり、意見としては佐藤と真っ向から反対している。「100人を幸せにする」という佐藤に、「素晴らしいがどのくらいまで通用するのか」と諭しているように。

 藤堂は「政治は清濁併せ呑むもの」という疑念を払拭するべく、佐藤につき、副市長の依頼を了承した。政治の考えで動いていない佐藤に刺激を受け、彼女を支えたいという藤堂だが、この『民衆の敵』の中で、不透明なもの、“奇妙な風”とも表されているのが、藤堂家という巨大な存在だ。藤堂家は、犬崎派と密接な関係にあり、藤堂誠の縁談相手はニューポート建設に関与している辻宮重工の令嬢。犬崎は、藤堂に圧をかけるため、風俗嬢の莉子(今田美桜)との写真を握り、週刊誌に売ることもできると脅迫する。その時に言った藤堂のセリフが「名前なんかどうでもよかったんです」。このセリフは、藤堂という肩書きではなく、「ワタナベ」という一人の男として、目の前の一人の彼女と出会い、恵まれない家庭環境にあった莉子を助けたかったという意味にも取れる。

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