『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』インタビュー
『ソードアート・オンライン』松岡禎丞&戸松遥インタビュー ハリウッドドラマ化にも喜びの声
『劇場版 ソードアート・オンライン ーオーディナル・スケールー』が公開中だ。公開初週の2日間(2月18〜19日)で、動員30万8376人、興収4億2576万2760円を記録、その週の興収ランキングで首位を獲得し話題を集めた。本作は、2012年と2014年に放送されたテレビアニメ『ソードアート・オンライン』(略称:SAO)シリーズの劇場版。原作者・川原礫の完全オリジナルストーリーである本作は、仮想世界から現実に舞台を移し、主人公のキリト(桐ヶ谷和人)とヒロインのアスナ(結城明日奈)が、新たな敵と対峙していく模様が描かれる。
このたび、リアルサウンド映画部では、キリト役の松岡禎丞とアスナ役の戸松遥にインタビュー。『ソードアート・オンライン』シリーズの魅力をはじめ、アフレコでのエピソードや演じる時の心境を語ってもらった。
戸松「これまでの『SAO』とは似て非なるもの」
ーーテレビシリーズでは、《ナーヴギア》や《アミュスフィア》と呼ばれるVRマシンを使い、仮想世界で冒険を繰り広げる物語でした。一方、本作には《オーグマー》というARマシンが新たに登場し、現実世界を舞台にキリト(桐ヶ谷和人)やアスナ(結城明日奈)たちが冒険を繰り広げます。舞台設定が大きく変わりましたが、この物語を読んだ時の印象は?
松岡禎丞(以下、松岡):ARとVRのいいところを上手く掛け合わせた川原(礫)先生は天才だな、と。それに、『ポケモン GO』ブームの流れを受けるように公開されたので、タイミング的には良かったと思います。当初は伊藤(智彦)監督も、世間に馴染みのない“AR”をどのように表現していけばいいのか悩んでいました。でも、“AR”の認知度がぐっと高まったおかげで、作品の世界観も割とすんなり受け入れてもらえるのかなって。
戸松遥(以下、戸松):川原さんのオリジナルストーリーになるので、初めて台本を読んだ時は、まるで原作の新刊を読んでいるような気持ちでした。これまでの『SAO』(ソードアート・オンライン)とは似て非なるものというか……近い未来に実現しそうな夢やアイデアがたくさん詰まっていますし、そうきたか! っていう驚きの展開も盛り込まれているので、このワクワク感をみなさんにも味わっていただきたいです。あと、今回はキリトとアスナの関係性を見つめ直すような物語になっています。結城アスナというひとりの女の子の成長や、彼女とキリトの関係の変化が丁寧に描かれているので、これまで以上にアスナの心の動きを意識しながら演じていきました。
ーーテレビシリーズがスタートした2012年から約5年間、共演される中でお互いに劇中のキャラと似ていると思った部分はありますか?
松岡:戸松さんは外見がアスナに似てますよね(笑)。アスナの髪型でイベントに登壇した時は、二次元から飛び出してきたと思うくらいそっくりで驚きました。あと、戸松さんの演技の仕方も好きです。僕もよく(演技が)全力と言われますが、戸松さんもガツン! とくるんですよ。もちろんアスナのキャラを保ちながらですが、ガーッと攻めてくるような勢いがある。あと、ユニークな方ですね。一般的に女性が言ってはいけないことでもスパーンって口にするんですよ。シリーズ通しても今回が一番すごかったです。文言は言えませんが、女性なら絶対にそんなこと言わないって反射的に突っ込むくらいの勢いでした。そういうところも含め、みなさんに愛される方なので、アスナにぴったりだと思います(笑)。
戸松:えっと、松岡くんがキリトに似ているところですよね……(松岡も)具なしパスタを食べてそうなところ? 劇中にキリトが具なしパスタを食べるシーンがあるんですけど、松岡くんも具なしパスタを家で食べてそうだなって。実際はどうなのかな?
松岡:バイト時代はやってましたね。本当に今回はキリトに共感するところが多かったです。
戸松:それに松岡くんは努力の塊のような人なので、そこもキリトに似ています。自分に厳しくて、すごくストイック。最近は見なくなりましたが、昔はリテイクになった時に自分で自分の頬をビンタして「落ち着けー!」って叫んでたよね(笑)。それが松岡くんの定番で、私たちはそれを温かい眼差しで見守る、みたいな。本当に真面目で全力なんだなって。表現の仕方は違うけど、その根底にある妥協しないところは、キリトに通じていると思います。
松岡:以前、マイクの前で緊張しないためにはどうしたらいいですかって浪川(大輔)さんに相談したことがあって、自分に自己暗示をかければいいと教わったんですよ。「絶対にできるから落ち着け」という言葉を、心の中じゃなくて口に出せば落ち着けるからって。それでもダメなときは、自分の頬をぶったたいて落ち着かせます。痛みによってリセットできるんですよね。でも、音響監督から、それを今やると新人がすごく不安がるから止めろって言われて……。それからは周りに配慮して、ひとりの収録現場でしかやらなくなりました。今でも叩きたくなることはありますけど、そこは自重しています(笑)。
松岡「どんな役をやるにしても私情は入れない」
ーー長年やっていても緊張することはあるんですね。
松岡:僕は今でも緊張します。キャリアを重ねていくと、そのぶん次の役への期待値も上がってくるので、それをプレッシャーのように感じることがあります。僕としても、一度現場で出したものよりも、次はもっと良いものを次の現場では出したいと思っているので、どんどん自分を追い込んでしまいます。
ーー本作では、キリトとアスナの絆が一層深まります。観ていてドキドキするようなシーンもありましたが、演じる側としてはどんな心境でアフレコに臨んでいますか?
戸松:私は、キャラクターと自分はまったくの別物として考えています。マイクの前に立ったときは、すでに役に入りきっていますね。事前に演技プランを練ることもありますが、実際にキリトの声を聞いたときに出てくる感情もあるので、収録後に聞き直すと予定とはまったく違うものになっていることはよくあります。自分の中で事前に作ったものを、共演者の方との演技や音響監督の要望に応えながら、現場でどう変化させていくのかが大事なのかなって思います。
松岡:僕もキャラクターの住む世界に入り込んでいくタイプです。ひとりの人間の人生を表現することが、声優の役割だと思うので、キャラクターと一体になっていくというか。どんな役をやるにしても私情は入れないです。ナチュラルに演じることが何よりも大切だと思っているので、事前に役を作るときも、相手との受け答えを念頭に置くようにしています。
ーー松岡さんと戸松さんは、キリトとアスナのように互いに支えあっているなとアフレコ中に感じたことはありますか?
戸松:松岡くんは、気持ちをすごいリラックスさせてくれます。私もシーンによっては緊張することがあって、なかなか上手くいかないときは、リラックスするのがすごく重要なんです。そんなときに松岡くんとお話するとなんだか緊張がほぐれます。昔、自分でもしたことを忘れるような些細な質問を、松岡くんは1週間くらい考えて答えてくれたことがあったんですよ。しっかりとした答えを返してくれるんですけど、忘れた私は何のことを言っているのかわからずにキョトンとする、みたいな。そんなところにも、和ませてもらいました。
松岡:支え合うとは少し違いますが、第1期のころに戸松さんや竹達さんへ難題をぶつけることはありました。キリトがアスナに結婚しようと言うシーンでは、戸松さんに「どう言ったらキュンとしますか?」って聞いたり、直葉に「ごめん」と言うシーンでは、「どう言ったら傷付きますか?」って竹達さんに聞いていました。結局、音響監督の方に、そんなことは自分で考えろと言われたんですけど、ふたりに聞かなかったらひとりで悶々としたままだったと思うので。
戸松:私の意見は何の参考にもならないのにね(笑)。でも、見どころの1つでもあるシーンのキリトから言われた一言は、テストより本番の方がずっと説得力がありました。その言葉を受けてアスナが言うのは、たった二文字のセリフなんですけど、キリトの思いに応えるすごく大事な言葉だと思っていたので、感情を表現するのがすごく難しかったです。