『東京タラレバ娘』『左江内氏』『日暮旅人』……日テレドラマなぜ好調? 各放送枠の傾向から考察

土9ができなくなった青春の暴力性を補完している日曜ドラマ

 土9がファミリー層に向けて作られるようになった結果、土9で作ることが難しくなった男性向けエンタメ作品の受け皿となっているのが日曜ドラマだろう。

 死神のノートを手に入れた青年のピカレスクドラマ『デスノート』や、宮藤官九郎が脚本を書いたゆとり世代の若者の青春群像劇『ゆとりですがなにか』など、土9に較べると暴力や恋愛の要素が強い荒々しいドラマが多い。現在放送されている『視覚探偵 日暮旅人』は、『金田一少年の事件簿』や『サイコメトラーEIJI』の堤幸彦がチーフ演出を務めており、90年代の土9のテイストを思い出させる懐かしい作品となっている。

総論 土9の終わり 土10はどんなドラマを生み出すのか?

 女性向けの水曜ドラマ、ファミリー向けの土9、男性向けの日曜ドラマ。大きく分けると日本テレビのドラマはこの3つに分類できる。 客層の住み分けと各放送枠のブランドイメージがしっかりとしているため、日本テレビのドラマはとても見やすく、安定した視聴率を維持している。しかし、それと引き換えに、放送枠をはみ出すような問題作は年々、減ってきているように感じる。

 例えば、土9で放送された木皿泉脚本の『すいか』と遊川和彦脚本の『女王の教室』。この二作は土9の棲み分けが緩かったからこそ、強烈な作家性によって生まれた名作だ。こういった問題作がテレビドラマの新しい流れを生み出していった。

 そんな土9が今クールで終了し、4月からは時間帯が10時に変わるというのは、歴史的な役割が終わったということなのかもしれない。愛着のある放送枠だっただけに土9の終了は寂しいが、10時台への移動は今までの土9とは違う新しい作風のドラマを生み出すのではないかと、期待している。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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