『GARAGE ROCKIN'CRAZE』Rockin'Jelly Bean、王様、セイジ インタビュー

Rockin'Jelly Bean × 王様 × ギターウルフ・セイジ『GARAGE ROCKIN' CRAZE』鼎談

RJB「このシーンにずっといる人たちは、これで食ってくつもりがない(笑)」

『GARAGE ROCKIN' CRAZE』場面写真

一一アンダーグラウンド・シーン全体が活気づいて、00年代にはメジャーの世界でもガレージ・リバイバルが起こります。でも、この映画に出ているバンドたちは我関せずという感じでしたね。

RJB:たぶんね、最初から音楽で食ってくと思ってる人たちは、このシーンをスッと出ていくんですよ。ここにずっといる人たちは、別にこれで食ってくつもりがない人たち(笑)。

王様:だって食えないでしょう! はははは。

RJB:あくまでも、でっかい趣味、みたいな感じですよね。これだけは続けたいっていう。だからバンドも辞めないし。

王様:Daddy-Oにも商売っ気がないじゃない? 普通ね、そういうシーンの仕掛け人って他にレーベルやったりするんだけど。

RJB:そういう商売っ気はないね。だから安心してついていける。

セイジ:うん、居やすい空気を作ってくれる人。まぁ変な人だなぁ、変わった人だなぁとは思ってたけど。

RJB:……一番変わってるのアンノちゃん(セイジ)だけどね。

王様:最初にウルフ見た時、みんなびっくりしたんだよ。僕らも演奏は相当下手じゃないですか。みんな下手なんだけど、初めてウルフ見た時は、みんな「えぇぇ? こんなにも下手なバンドがいるの!?」って。

RJB:「こんなのでステージ出ていいんだ!」って(笑)。

王様:最初、ドラムが弟のマサハル(現:The Thunderroads) だったんだよね? ほんっと下手くそ!

セイジ:ははは。いや、出るって決まった二週間前に前のドラムが辞めちゃって。ドラムなら二週間くらいで叩けるだろうと思って、上京してきたばっかりのマサハルに叩かせて。

RJB:その下手さを気合でカバーする(笑)。凄いことになってたね。

王様:「ここまでやっていいんだ!」って感じだった。たぶん全員が思ったと思う。だからウルフの昔話になると、みんなが「あのバンドを最初にいいと思ったのは俺だ!」って言い出すんですよ(笑)。

セイジ:いや、でも俺も、あそこにいたから「火星ツイスト」みたいな曲が書けたと思う。「マシンガンギター」って曲とか。ああいう変な発想を出せたのは、あの場所だったからだよね。「なんか変わったことをしたい! 変な曲を作りたい!」っていう欲望が生まれた場所。

RJB:あっ、自分でも変な曲だっていう認識はあるんですね? 

セイジ:うん……多少はある(笑)。でもそういう変なことを突き詰める、最初のきっかけになったのが〈Back From The Grave〉だと思ってる。

 

一一そういう場所が今もあり、当時のバンドから若いバンドまでが集まっているのは、素敵なことですよね。

セイジ:最近のUFO CLUBでやってる〈Back Fro The Grave〉見たら、若いバンドで面白いの、いっぱいいるからね。びっくりした。

RJB:50代から20代までがいるって、確かに珍しいかもしれない。でも20代の若い子たちがちゃんと来てくれて、シーンを引っ張ってくれるのはほんとありがたい。今はさらにネオ・ロカビリーとかサイコビリーの人たちも入ってきてる。ジャンル関係なく面白そうな奴らはすぐ友達になる、そこはDaddy-Oの、あの人特有の感覚でしょうね。

一一イベントの旗振り役が変わらないことが大きい。

RJB:仕掛け人みたいな人がいなくなると、街のシーンもなくなっちゃうもんね。ライブハウスに人が来なくなっちゃって。アメリカとかでもそうだけど、ライブハウスがいつの間にかダンスクラブになってたりして。でも東京だけは相変わらずバンドが集まってくる。それはDaddy-Oが真ん中にいるから。あの人のところに行けば俺たちのバンドも出れるかも、っていう夢が今もあるんですよね。

一一わかりました。最後に、みなさんは映画『GARAGE ROCKIN’ CRAZE』を見て、どんなことを感じましたか。

RJB:もちろんマリオが映画撮ってるのは知ってたけど、「ここまで凄いの作ってたの!?」ってびっくりしちゃった。内容もそうだけど、作ってる期間もね。5年くらいかけて昔の映像をずっと撮っててくれたりして。

セイジ:ここまで本気だとは思わなかったよね? もうちょっと協力してやれば良かった。昔の映像とかもっと渡せば良かったかなぁ(笑)。

RJB:ほんとだよね(笑)。でもそれぐらい、俺たちは気づいてなかったんだよね。このシーンがそんなに特別だとも思ってなかったし。でもマリオの目線から見たシーンはほんとに面白かった。あぁ、こんなふうに見てくれてたのかって。これはもっといっぱいの人に見てもらいたいなぁと思ったし。

一一当事者たちが気づかない面白さに気づけたんでしょうね。かといって「異文化のヘンなもの」として片付けてない。ちゃんと愛が感じられます。

セイジ:確かに。マリオは本気でこのシーンに感動してたと思う。

王様:普通に音楽好きの方ですよ。よくお客さんとしていたもん。「お、マリオ今日も来てる」「また撮ってくれるって」みたいな。

RJB:で、俺たちもマリオに向けて喋ってるから、普通に喋るよりもさらにオープンに、ちょっとオーバーアクション気味になってるかもしれない。それもあってみんなイイ顔してるんですよ。彼じゃなかったら、もうちょい閉じた、硬いものになってたかもしれない。うん、マリオじゃなかったらこの映画になってないと思いますね。

(取材・文=石井恵梨子/取材協力=ぷあかうSTAY FREE)

■公開情報
『GARAGE ROCKIN' CRAZE』
1月14日(土)~1月27日(金)渋谷HUMAXシネマにてレイトショー
企画・製作:Freza Films
プロデューサー:マリオ・クジク&B・B・クラーク
監督:マリオ・クジク
脚本(構成):B・B・クラーク
編集:マリオ・クジク&B・B・クラーク
撮影:マリオ・クジク、テイオ、小野由紀子
ポスターデザイン:Rockin'Jelly Bean
スチール:マリオ・クジク
写真、映像提供:Daddy-O-Nov、Rockin'Jelly Bean、Eddie Legend、Maki S.
出演:The 5.6.7.8's、20 Hits、Theee Bat、Baitones、Bobby's Bar、Daddy-O-Nov、The Drexel、Eddie Legend A-Go-Go、The Fadeaways、Firestarter、The Fly & His One Man Garbage、Gasoline、Great3、The Great Mongoose、Jackie & the Cedrics、Jet Boys、Jimmy Mashiko、Los Rislaz、Minnesota Voodoo Men、Rock-A-Cherry、Saturns、Supersnazz、Stompin' Riffraffs、The Titans、Texaco Leatherman、Vivian Boys、Young Parisian、ギターウルフ、ザ・シャロウズ、東京 Cramps、マキニカリスほか
配給:日本出版販売
提供:キングレコード+日本出版販売
16:9/カラー/HD/98分/2016年/日本映画
(c)2016 Freza Films

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