『ファインディング・ドリー』MovieNEX発売記念 ピクサー・スタジオ現地取材
ピクサー日本人クリエイターが語る、『ファインディング・ドリー』制作の裏側と日米アニメの違い
小西「日本のアニメーションの弱い部分は“シナリオ”」
ーー日本とアメリカのアニメーションについて、違いを感じることはありますか?
原島:アニメーションという同じカテゴリではありますけど、別物だと思うんです。アメリカではきちんとストーリーを伝えることが重視される一方、日本のアニメーションは受け手に委ねる部分がある。『エヴァンゲリオン』なんかもそうですが、「あれはどういうことだろう」と議論が生まれるものが好まれる。アメリカ人は、善悪がはっきりしているものやハッピーエンドなストーリーを好むので、逆にそういうものは受け入れられにくいんですよね。あと、日本のアニメは、画は止まっているんだけどセリフとナレーションで話が進んでいくものや、動きはすごいんだけど、何が起こっているのかがわからないようなものが多い気がします。それはそれでまた違う分野だとは思うんですけど、アメリカではそれがNGだったりする。監督が観客に観てほしい部分が必ずあるので、それ以外のところが動いていて、そこに目がいってしまうようではダメだと言われてしまう。観てほしい部分に視点がいくように、カメラワークなども全て計算して作るのがアメリカ式なんです。その辺りのギャップを感じることはありますね。
小西:日本の技術はすごく高いと思います。ただ、これは最近気づいたことなんですが、ピクサー作品が幅広い世代に愛されている理由は、絶対にシナリオにあると思うんです。そこが日本の弱い部分じゃないかなと。言ってしまえば、考え方としては実写の映画と同じなんですよね。ピクサーでアニメーション映画を作っていると言っても、もともとは実写映画の脚本を書いていた人やライブアクションのエデイターをしていたような人がほとんどですから。ピクサーは何もないところから作品を立ち上げるので、まさに劇を作るような感じ。アクターがたまたまCGのキャラクターで、そのキャラクターを演出したりCGのセットを動かしたりしているということなんです。なので、日本でアニメーションを作っている人も、常にシナリオを念頭に置いて作業をするとより良いものになると思います。
(取材・文=宮川翔)
■リリース情報
『ファインディング・ドリー』
MovieNEX(4,000円+税)発売中&デジタル配信中
(c)2016 Disney/Pixar
公式サイト:www.disney.co.jp/movie/dory