ジョン・ファブロー『ジャングル・ブック』インタビュー
「CGはもっといろんな物語を表現できる」『ジャングル・ブック』監督が語る映画とテクノロジー
「フィルムメイカーは常に交流があり、お互いを応援しあっている」
ーーたとえばクリストファー・ノーラン監督などは、あえてCGを使わずにアクションシーンやメカニックを撮影する手法を採っています。そういった手法や作風に対し、ご自身の方法論をどのように位置付けていますか?
ジョン:クリストファー・ノーラン監督の手法はすごく良いし、とても尊敬している。同じように、いまなおフィルム撮影にこだわる監督がいるのも、すごく良いことだ。J・J・エイブラムス監督は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を、パペットを使用するなど昔ながらの手法で作り上げて、私たちが愛してやまなかった『スター・ウォーズ』シリーズのスピリットを伝えてくれた。ジョージ・ルーカスは当時、最先端の技術を結集して『スター・ウォーズ』シリーズを私たちに届けてくれたけれど、それを伝統として受け継ぎ、新たな作品を生み出すというのは、素晴らしいことだと思う。一方で、フィルムメイカーとして常に新しい技術に挑戦し、それらを駆使して作品を作り上げる姿勢も、もちろん尊いものだ。3Dやモーションキャプチャといった新たな技術を採り入れているジェームズ・キャメロン監督とかね。私自身が、なんらかの形で映画に貢献するのであれば、CG技術をより幅広い作品に応用したいと考えているよ。現在は、CGはとくにアクション映画などに使われているけれど、そのことが映画の幅を狭めているともいえる。CGを使った作品はどれも同じようなものばかりになりがちだ。だからこそ私は、CGを有効に使えるのは、アクションやSFばかりではないということを皆さんに知ってほしい。もっといろんな物語が表現できるはずだよ。ちなみに、私たちフィルムメイカーは常に交流があり、お互いを応援しあっている。彼らがそれぞれの手法を追求しているからこそ、私も自分のやるべきことがわかるんだ。
ーーお互いの仕事に影響を受けあっているのですね。ところで本作は、“生きる力”が大きなテーマとなっています。監督にとっての“生きる力”とは?
ジョン:私はいま50歳になるところで、子供が三人いて、フィルムメイカーとして友人たちとともに歩んでいる。このことが、私の人生にあらゆるものを与えてくれる。『シェフ』を撮ったときに学んだんだけれど、料理人たちは自分の仕事にとにかく集中して、気持ちを注いで、卓越したことを行っているんだ。自分の仕事に誇りを持ち、並ならぬ思いを持って働いていて、それはとても良い人生の暗喩になるんじゃないかな。シェフが自らの仕事に専心して作り上げた料理は、食べた人の記憶に残る。食べた瞬間はすぐに消えてしまうものだけれど、その経験は食事を楽しんだ人の思い出としてずっと残っていく。そして、そういう経験が積み重なることで、人生は豊かになっていく。たとえば、息子と始めてお寿司を食べた時の記憶を、私は決して忘れないだろう。私自身も、そういった“経験”を皆さんに提供するために、自分の仕事に集中したいと考えているよ。
(取材・文=松田広宣)
■公開情報
『ジャングル・ブック』
8月11日(木・祝)全国ロードショー
監督:ジョン・ファヴロー
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
原題:「The Jungle Book」
(c)2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
公式サイト:http://www.disney.co.jp/movie/junglebook