松本潤主演『99.9』と『リーガルハイ』『HERO』の共通項ーー弁護士と検察の関係をどう描く?

 さらに、前話で描かれた佐田の娘・かすみ(畑芽育)がアメリカ留学から帰ってくるエピソードは、単に彼の家族構成を掘り下げるための役割ではなく、きちんと今回の物語に対応した重要な働きを見せた。家族旅行を中止して因縁の事件と向き合うこととなった彼は、獄中死した被告青年の母親に自ら会いに行く。そこには、自分の息子を犯罪者に仕立て上げた張本人を前にしても、ただひたすらに息子の無実を信じ続ける母親の姿があった。それに心を打たれたのか、彼は珍しく深山(松本潤)に協力して事件解決に注力するのだ。

 家で妻に押されっぱなしの姿はこれまでも描かれていたが、今回ほど佐田の家族への思いが描かれたのは初めてである。旅行が中止になっても文句をひとつ言わない妻と娘に対して小さな声で感謝を述べたり、クライマックスで真犯人と向き合うときには、家族を持つ父親の立場に立って話を進める。その中で最も印象的だったのは、「(18年前に)自分が事件を追って真犯人を見つけていれば、あなたにこんな苦しい選択をさせることはなかった」という台詞である。

 冤罪が人生を狂わせてしまうことと同じように、罪を犯した者もまた、自身の家族や友人など、これまで積み重ねてきた人生をすべて棒に振るうのだ、という至極当たり前のことを、きちんと描き出しているのである。佐田は真犯人に、自首することを勧める。これは依頼人でなくても、罪を犯した者の立場に立って、最も適した更生の道を共に探し出す、刑事専門弁護士としてのあるべき姿なのかもしれない。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■ドラマ情報
『99.9−刑事専門弁護士−』
出演:松本潤、香川照之、榮倉奈々ほか
脚本:宇田学
トリック監修:蒔田光治
プロデュース:瀬戸口克陽、佐野亜裕美
演出:木村ひさし、金子文紀、岡本伸吾
製作著作:TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/999tbs/

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