アラフィフ男性の恋愛ドラマはなぜ増えた? “21世紀版寅さん”久留里卓三の魅力から考察

 『男はつらいよ』の主人公・車 寅次郎はマドンナに対して、熱に浮かされたように恋心を燃やし、家族や隣近所まで巻き込んだ騒動まで巻き起こしてしまうが、女性に対する対応は硬派そのものだ。ときには寅さんに甘えて投げやりな発言をする女性に対し、叱って、諭してみせ、抱きつかれて泣かれても遠慮なく肩を貸し、決して自ら手出しはしない。

 一方、久留里卓三は美人に頼られると恋心はすぐに着火し、下心があけすけになってしまう。たとえば女性に抱きつかれた場合、「じゃあすみません。僭越ながら僕も」と心の中でひとりごち、遠慮なく肩に腕を回す。次に女性が声を発した瞬間にはすでにロマンチックモードに入ってしまい、「もっとキツくですか。」と思わず声に出して、暴走してしまう危うさがあるのだ。そして、恋心を感じると行きつけの蕎麦屋の店主・荒木(小栗旬)に相談せずにはいられない。そのさまは若い男性となんら変わりがない。一見、ダンディズムに身を包み、スマートに下町デートを楽しんでいるように見えるが、秘めた思惑が物語の中で全て台詞となって表現され、いまどきの50オトコ久留里卓三の弾むようなときめきが手にとるようにわかってしまう。恋に対しての純情ぶりだけをみると久留里卓三は「21世紀版寅さん」とも言ってもいいのかもしれない。

 2014年7月にIINA株式会社が恋愛ゲーム「制服の王子様」のユーザーを対象に行った調査によると、「40代以上の男性と付き合える」という女性が全体の95%を占め、さらに結婚対象における年齢差については、20歳以上でもOKという人が全体の67%にものぼった。(*5)

  若い女性が求める中年男性への「安心感」、「なんでも受け止めてくれる」、「包容力」と、いまどきの中年男性が求める若い女性との恋愛願望の需要と供給が一致しているいま、50オトコの恋愛を描いたドラマが増えたのも頷ける。江口洋介、堤真一、仲村トオルなど、ぐっと渋さを増した俳優陣が続々と50代を迎える今後、中年男性を描いた恋愛ドラマの需要はますます高まりそうだ。

<引用文献>
*1 カレセン http://zokugo-dict.com/06ka/karesen.htm
*2 カレセン―枯れたおじさん専科 (アスペクト)
*3 exicite.ニュース(2015.10)「50代男と20代女、恋愛関係に発展する可能性はある?」
*4 dot.(2015.11) 若者より恋愛願望強い? バブル世代にお見合いパーティー人気
*5マイナビニュース(2014.7)「枯れ専ブーム到来?女性の95%が「40代以上の男性でもOK」

■内藤裕子
ライター。2004年より雑誌の編集、WEB企画、商品企画をメインに、イベント企画、総務、人事、広報を経てクリエイターのマネージメントに携わる。現在看護師として働く傍ら、写真関連のUstreamの企画構成にも携わる。

■ドラマ情報
『東京センチメンタル』
2016年1月15日(金)24時12分より放送開始
監督:三木康一郎、今泉力哉、渡部亮平、日向朝子
出演者:吉田鋼太郎、高畑充希、片桐仁、大塚寧々
脚本:松本哲也、ブラジリィー・アン・山田、新井友香
チーフプロデューサー:山鹿達也
プロデューサー:井関勇人、阿部真士、藤原 努
制作協力:ホリプロ
製作著作:テレビ東京
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/tokyo_sentimental/

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