湊かなえ『少女』、本田翼&山本美月で映画化決定 “人が死ぬ瞬間を見たい”女子高生たちを描く

 湊かなえのベストセラー小説『少女』の映画化が決定し、本田翼と山本美月が出演することが発表された。

 本作は、『告白』『白ゆき姫殺人事件』などで知られる湊かなえが2009年に発表し、累計発行部数100万部を超える原作小説を映画化したもの。「人が死ぬ瞬間を見てみたい」という心に闇を抱えた高校生の由紀と敦子。親友でもある2人が、夏休みにそれぞれのボランティア先で自らの思いを遂げようとする模様を描く。

 メガホンを取るのは、『ぶどうのなみだ』『繕い裁つ人』の三島有紀子。本作で製作を務める森川プロデューサーは、「『しあわせのパン』や『ぶどうのなみだ』の質感も素晴らしいが、こちらが本筋と思えるほど、三島監督は、重いテーマをサラッと表現できる監督。湊かなえさんの世界観と合うと思った」と、三島監督起用の理由を明かしている。

 本田翼が演じるのは、知的で繊細でミステリアスな女子高生の桜井由紀。家族とともに痴呆症の祖母の介護をしているが、ある一件から祖母によって左手に一生消えない傷を負わされ、祖母に対して憎悪と嫌悪感を抱いている。一方の山本美月が演じるのは、天真爛漫で少しだけ空気が読めないところがある女子高生・草野敦子。過去にいじめられた経験があり、過度の不安症から人の悪意に触れると過呼吸になってしまうことがある。

 23歳の本田と24歳の山本。20代の2人が高校2年生の役柄を演じることについて、「等身大の女性が演じるよりも、一度その世代を通過してきた経験があったほうが、少女から大人の女性へ成長していく様子をよりリアルに表現してもらえるのではないか」という狙いがあったと、森川プロデューサーは語る。原作者の湊も撮影現場を訪れた際に、「『少女』を再読すると、本田さんと山本さん、2人の顔が浮かんでくる程ピッタリ!」と、大絶賛したという。

湊かなえ(原作者) コメント

 現場に伺った際、クライマックスのシーン撮影を拝見しました。そこからどんどん妄想が膨らんでいって、映画の完成がとても楽しみになりました。本田翼さんの演じた「由紀」というキャラクターは、誰よりも強くて、誰よりも弱い…無理をして強さを押し出している女の子です。最初に本田さんが演じると聞いた時から、「ぴったり!」だと思っていました。
 山本美月さん演じる「敦子」は、「由紀」とは反対に本当は強いけれど、一見ふわふわした感じで…弱さの中に自分を隠している子。山本さんのイメージとも相まって、敦子に合っているなと感じました。「少女」を再読すると、お2人のイメージをあてはめながら読んでしまう程です。

本田翼 コメント

 映画出演のお話をいただいてから原作を読んだのですが、凄く面白くて…! これまで私が演じてきた役は、明るいキャラクターが多かったので、由紀の様な役柄は正直少し不安だったのですが、「チャンスだ!」と思いました。湊先生が現場にいらした時に、「由紀にぴったり」と言ってくださって、凄く嬉しかったです。
 山本美月さんとは4度目の共演。元からサバサバしている性格だということは知っていましたが、今回一緒に演じてみて、凄く研究熱心で本当に人を良く見ているなと思いました。一つの事に対する集中力が凄いんです。
 三島監督は、エネルギー溢れる監督でした。撮影中は毎日、監督から“挑戦状”を貰っている感覚(笑)。結構難しい“挑戦状”を受け取ることもあって、監督のおっしゃっていることを上手く飲み込めない時は、とても苦しくて「どうしたら監督と同じ方向を向けるんだろう」と悩ましく思っていました。1ヵ月弱の撮影期間でしたが、毎日が物凄く濃厚で…「あれ、これって今日の出来事だっけ…!?」と分からなくなる程でした。

山本美月 コメント

 私が演じさせていただいた敦子は、感情の起伏が大きい子だと台本を読んで感じました。これまで明るいキャラクターを演じさせていただくことが多かったので、色々な感情を表現することに、凄くプレッシャーを感じていました。
 個人的に、ミステリー作品が大好きなのですが、この「少女」という作品は、ミステリー要素の中に、人間味を強く感じる作品。楽しみながら演じることが出来ました。
 本田さんとは何度か共演させていただいているのですが、ここまでしっかりと一緒に演じるのは初めてでした。いい意味で「マイペース」というお話を聞いていたので、どんな感じなのかな?と思っていました(笑)が、現場では色々な話をしたり、待ち時間にゲームをしたりして楽しく過ごせました。
 三島監督はたまに、催眠術のように演出を付けてくれるんです(笑)。監督から「だんだん(敦子は)こう思ってくる…」と耳元でささやかれると、なぜか本当にそう思えてくるんです。その影響か、撮影期間中に勉強の為にほかの作品を見ることがあったのですが、敦子寄りのキャラクターに感情を入れ込んでしまって…。心が無防備というか、傷つきやすい状態になることもしばしばありました。

三島有紀子(監督) コメント

 湊かなえさんの描く“毒”が大好物です。それに女子の17歳を描きたいというのが始まりです。17歳というのは、非常に自分勝手な時期で、どこにぶつけて良いのか分からないエネルギーに溢れ、それでいて“死”と背中合わせで、当人達からしたら、世間で言われる“キラキラと輝いている時期”ではけっしてなく、大きな閉塞感の中で生きていると思います。原作には、自分勝手さと閉塞感がしっかりと描かれていて、登場人物のキャラクターも個性的で、何より全体を通しての疾走感がありました。その三つを私なりに解釈して作品作りを目指しました。
 本田翼さん、山本美月さんという、今とても輝いている、未来有る女優のお二人の今を映像に残したいという欲求がありました。この作品では、彼女たちがこれまで開けたことのない扉をどれだけ開けてあげられるのか…ということが使命だと思っています。
 本田さんは、これまで明るいキャラクターを演じられることが多かったようですが、じっくりみるとどこか「怒りの感情」を秘めた表情を感じられることがありました。そこをしっかり前面に押し出すことで、本人が映像をみて「怖い!」と言ってしまうくらい、三白眼ベースの知的で繊細な“由紀”が出来上がったと思います。
 山本さんは、とても気を遣う、細かいところまで周囲を見ている方。であって、根の部分は明るくて男前なので、素で“敦子”を演じられるのではないかと思っていました。作品では、人間の脆さを表現しながら、かっこいい敦子が出来上がりました。
 お二人に、丁寧に演じてもらうことを一番に心がけました。

■公開情報
『少女』
秋公開
原作:湊かなえ「少女」(早川書房刊)
監督:三島有紀子
出演:本田翼、山本美月ほか

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