石田衣良、『愛しき人生のつくりかた』トークショー登壇「誰でも人には言えない後悔を持っている」

 

 俳優として『エディット・ピアフ〜愛の賛歌~』等にも出演しているジャン=ポール・ルーヴ監督がメガホンをとった『愛しき人生のつくりかた』の公開に先立ち、作家の石田衣良をゲストに迎えたトークイベントが、Bunkamura(東京)にて12月3日(木)に行われた。

 『愛しき人生のつくりかた』は、パリで暮らす3世代の家族が人生の輝きを見つめ直す様を、優しいタッチで描いていくヒューマンドラマ。『池袋ウエストゲートパーク』『4TEEN』など、数多くの人気小説を手掛けてきた石田は「世代ごとの特徴をよくとらえているし、それぞれのストーリーがバランス良く描かれている」と独自の視点から本作を評価し、フランスでヒットした理由について問われると、「生活や経済が厳しくなってきているからこそ、家族の絆をもう一度見つめ直そうとする空気が世界中に見られる。その流れがヒットの要因になっているのでは」と解説した。

 心優しきおばあさんマドレーヌ(アニー・コルディ)の息子であり、定年退職をしたばかりのミシェル(ミシェル・ブラン)と、その妻ナタリー(シャンタル・ロビー)の夫婦関係を見て、「この年齢になっても、お互いのことが大好きで、恋愛関係が続いているところがフランスらしい。日本人は、奥さんのことを可愛いと思っていても口に出すことはないですよね」と恋愛観の違いを語り、石田自身の恋愛について聞かれると、「小説の中ではどんなことでも書けるが、(自分も)現実で『愛してる』とは言えない」と本音をこぼし笑いを誘った。

 

 また、ミシェルの息子で小説家を目指す青年ロマン(マチュー・スピノジ)については、「すごく素直でいい子ですが、もう少し屈折しないと小説家には向かない。(小説家は)心の闇を楽しむことと、あらゆるものを相対的に見る目が必要ですね」と、小説家ならではの感想を述べ、続けて「人をよく観察するとわかるのですが、誰でも人には言えない後悔を必ず持っているので、それを集めて小説にしています」と創作のもとを明かした。

 ミシェルが人生相談をするシーンに掛けて、妻から「若い男ができたから別れたい」という話を持ち出されたらどうするという質問に対しては、「我々の年代が若い世代に勝てるのは忍耐力があるところ。若さにアドバンテージを感じることはない。フランスでは、50~60代の方々が胸を張って生活しているし、(若い人より)大人の方が人気が高い」と同世代の男性を鼓舞する一幕も。

 MCから自身の作品にも通じる部分があったのではと聞かれると、「大きな事件や悲惨なことをあえて描かず、登場人物のエピソードをバランス良く積み重ねていると感じた。どの世代にも、それぞれ魅力がありながらも解決しがたい問題を持っていることが丁寧に描かれている」と語り、「物語の前半と後半の緩急のつけ方や、画角の使い方がすごく良い。同じシチュエーションや台詞を繰り返すシーンがあるのですが、そこだけを短編にしてもいいくらいだ」と、脚本の秀逸さを評した。
 
 これから鑑賞する人へのメッセージを問われると、「この映画は、自分の隣にいつもいてくれる人のことを描いた映画です。最後はあたたかい気持ちにしてくれる作品なので、鑑賞後は奥さんや恋人と手を繋いで帰ってほしいですね」とコメントし、和やか雰囲気の中、トークショーは終了した。

 

◼︎公開情報
『愛しき人生のつくりかた』
2016年1月23日(土)、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
監督・脚本:ジャン=ポール・ルーヴ
原作・共同脚本:ダヴィド・フェンキノス『ナタリー』
出演:アニー・コルディ、ミシェル・ブラン、シャンタル・ロビー、マチュー・スピノジ、ジャン=ポール・ルーヴ
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト
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