田口トモロヲと松尾スズキ、Eテレ『SWITCH』で監督トーク 松尾「僕らのやってることは文章に残せない」

 『SWITCHインタビュー 達人達』(NHK Eテレ)、9月19日の放送回(Vol.88)に、田口トモロヲと松尾スズキが登場した。

 25年来の付き合いでありながら、一対一で話す機会は、これまでなかったというふたり。役者としてはもちろん、映画監督としても活躍するふたりの対談は、自ずとそれぞれの最新監督作の話へ。田口の最新作『ピース オブ ケイク』を観た感想として、「トモロヲさんの芸風とできあがった作品が、あまりにもかけ離れていることに驚いた」という松尾。彼のなかでは、かつて田口が主演した映画『鉄男』(監督:塚本晋也/1989年)の印象が強いようだ。さらに、「力が入っている感じが全然ない。プロの仕事をしていると思いました」と語る松尾に、田口は女性作家(ジョージ朝倉)による漫画を原作とする本作を撮る上での苦労について語った。

「『男目線じゃない?』って言われたくなかったんです。これは男から見た女性像だよねっていう作品もあるけれど、今回は原作を読んで、原作をリスペクトしたので……それを作り上げられるのかっていうところ、すごい苦労しました」。さらに松尾は、本作のラブシーンに注目。「(主演の)多部(未華子)ちゃんが、どんな温度でキスをしていくのか……恋愛なのか快楽を求めてなのか流されてなのか、いろんなタイプのキスがあって。それで物語が作られているような気がした」と発言。それは田口自身にとっても、本作の最大の発見だったようだ。「キスってこんなに変化が出るんだって、僕も改めて思いました。キスという行為は、ラブシーンのなかでは過激な行為として描写することができる。そういう発見がありました」。

 その背景には、「R指定にはしたくなかった」という田口の思いもあったという。R指定を免れるため、演出部の男たちと、さまざまなラブシーンを実際にやってみた動画を撮影。それを映倫関係者に見せ、助言をもらいながら最終的な演出を考えたという。「腰を動かしちゃダメなんですよね?」という松尾に、「両方を同時に揉んじゃダメとか、揉み方とかも、いろいろ(基準が)あるんですよ」と田口が応えるなど、映倫基準の難しさについて、ひとしきり盛り上がった。続いて、田口の演出スタイルについて興味を持つ松尾。「最初は怒ったほうがいいのかなと思って、一回怒ってみたんですけど、そしたら年上の助監督に逆ギレされて(笑)。それで、自分はそういうキャラクターじゃないんだなと思ったんです」と、現在の穏やかに根気よく役者やスタッフと話し合うスタイルに至った経緯を田口は説明した。

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