サービス開始直前! Netflix日本社長グレック・ピーターズ直撃インタビュー

Netflix日本社長、壮大なビジョンを語る「20年後も、Netflixは日本でサービスを続けていく」

日本のローカルコンテンツに注目する理由

――Netflix Japanのこれまでの公式のアナウンスからは、Netflixが日本のローカルコンテンツを非常に高く評価していること、今後日本でNetflixを運営していく上でローカルコンテンツの制作にも非常に力を入れていくということが強調されていました。実際のところ、その方針は「日本だから」なのでしょうか、それとも他の国でもやってきたことなのでしょうか?

ピーターズ:ローカルコンテンツの制作や、その国のクリエイターとの協力体制は他の国でもやっていますが、日本ではよりそこに力を入れていきます。ローカルコンテンツの制作を充実させる理由は大きく二つあって、一つは、言うまでもなくその国のユーザーにより親しみやすいコンテンツを届けること。もう一つは、その国の優れたコンテンツを世界に届けるシステムを我々は持っているということです。将来的には、日本のクリエイターと一緒に作ったコンテンツを世界中に発信していく可能性も視野に入れています。

――何人かの名前の知られた映画監督やクリエイターには、すでにNetflixからアプローチがあったなんて噂もちょっと耳にしています(笑)。

ピーターズ:(笑)。実際に、本当にたくさんの人と様々な話をして企画を進めている段階です。今後、何かかたちになったらすぐに発表させてもらいますので、楽しみにしていてください。

――逆に言うと、今の段階でNetflixから話が来ていないクリエイターは「Netflixのお眼鏡にかなわなかった」という理解でいいんでしょうか?(笑)。

ピーターズ:No! No! No! そんなことはまったくないです! 実は、我々からアプローチをするだけではなく、たくさんの日本のクリエイターからアプローチを受けてもいるんです。なので、いつでも我々の門戸は開いていると思ってください。才能のある人とだったら、我々は誰とでも一緒に仕事をしたいと思っています。

――「日本のクリエイターと一緒に作ったコンテンツを世界中に発信していく可能性」について、自分にはちょっと耳当たりのいい理想論のようにも思えるんですね。先ほどあなたは「日本にはたくさんの素晴らしいストーリーがあって、たくさんの素晴らしいクリエイターがいます」と言っていましたが、確かに日本には、まだ映像化されていない、あるいは映像化されてもそれが国内のみでしか消費されてない素晴らしいストーリーのアイデアはたくさんあるかもしれません。でも、それを世界中の視聴者を満足させられるレベルの映像作品としてデベロップさせることができるクリエイターの数は、現状、非常に限られていると思うのです。それは、才能の問題というより、環境や経験の問題かもしれませんが、それを変えていくのはとても時間がかかると思います。実際、アメリカのドラマのマーケットが日本でも拡大していくのと反比例するように、日本では地上波のテレビドラマ離れが急速に進んでいて、Netflixが順調に普及していくと、その状況を加速させることにもなり得ると思います。端的に言って、あなたの発言だけを聞いていると、Netflixはそんな危機的な状況にある日本の映像界を過大評価しているようにも思えるのですが。

ピーターズ:あなたの言ってることはきっと正しいのでしょう。でも、私が一番可能性を感じるのは、そもそも新しいストーリーのアイデアが豊富にあるということなんです。世界的に見て、それは非常に貴重なものだし、日本発の一風変わったアイデアというものが世界の映像界に大きな影響を与える可能性は十分にあると思います。ただ、それを映像化するスキルにおいては、日本はまだ成長の余地が大きく残されているのかもしれないですね。Netflixができることの一つは、各国の才能を結びつけることです。それぞれの国のクリエイターに得意な分野で才能を発揮してもらって、それが国籍を超えて一つの作品になることもあるでしょう。だから、どんなに理想主義と言われようと、夢想家と言われようとーー。

――そこまで言ってません(笑)。

ピーターズ:(笑)。Netflixは10年、20年の長いスパンで、日本の映像界にポジティブな影響を与えることができればと思っています。10年後、もう一度インタビューに来てもらって、「私が言っていたことは理想論でしたか?」とあなたに訊いてもいいですか?(笑)

――楽しみにしてます(笑)。最後にもう一つ。今回、Netflixが日本でスタートする際の目玉作品の一つは、マーベル・コミックス原作の『デアデビル』ですよね。一方で、Netflixが本国アメリカにおいてブランド力を高めた理由の一つは、『ハウス・オブ・カード』のデヴィッド・フィンチャーを筆頭とする、スーパーヒーローものに牛耳られてしまったハリウッドに嫌気がさした優秀な映画作家たちに、新たな制作の環境を与えてきたことにありました。そのNetflixがマーベルのスーパーヒーローものをやる。そこに、結局ドラマの世界もハリウッドの後追いをしているんじゃないかという危惧を覚える人もいると思うのです。

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ピーターズ:言いたいことはすごくよくわかります(笑)。ただ、Netflixがターゲットとしているのは本当に幅広いユーザーなんです。『ハウス・オブ・カード』のような硬質なポリティカルサスペンスが大好きな人もいれば、きっと『テラスハウス』のような作品が大好きな人もいる。その両方をターゲットにしていく必要があるんです。その上で、例に挙げていただいた『デアデビル』に関して言うなら、とにかく「一度見てください」と言うしかないですね(笑)。いわゆる、伝統的なスーパーヒーローものとは一味も二味も違う作品なんです。人間の深部を描いたヒューマンドラマであり、敢えて言わせていただくなら、あらゆるスーパーヒーロー作品の中で最も『ハウス・オブ・カード』に近い作品だと思います。

(取材・文=宇野維正)

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