滝川羊の名作『風の白猿神』が32年ぶりに再始動! 注目作のリブートが続く11月のライトノベル

 2026年11月のライトノベルは、伝説的なシリーズの再始動が2作品も並んだ。まず、神埼紫電の「ブラック・ブレット」シリーズ。ウイルス性寄生生物「ガストレア」の侵攻で追い詰められた人類が、硬い壁に囲まれた都市でどうにか生き延びているという舞台設定の上で、兵器として改造されて警備会社で働くようになった少年が、相棒の少女たちと戦うSFアクションが支持され、アニメ化もされた。

 2014年刊行の第7巻で止まっていたが、11月10日に加筆・修正などを経て再始動する形で『ブラック・ブレット 新世界秩序01 神を目指した者たち』『02 VS神算鬼謀の狙撃兵』が電撃文庫から同時に刊行。ここから4ヶ月連続で2巻ずつ刊行され、新章へと入って12年待ったファンに新たな展開を見せ、新しいファンにかつての読者の熱狂を改めてもたらすことになる。続きを待ち望んだファンも改めて展開を追うことになるだろう。



 「第4回ファンタジア小説大賞」で大賞となり刊行されながら、1冊で終わった滝川羊「風の白猿神(ハヌマーン)」は、実に32年ぶりの再始動となる。11月20日に『風の白猿神 1 神々の砂漠』と、ファンが夢にまで見た続刊『風の白猿神 2 幻惑の聖域』がファンタジア文庫から単行本として登場する。

 世界を大混乱に陥れた戦争が終わり、大地の3分の1が砂漠と化した未来で、神話の力を宿した巨大兵器を駆って旅をし、戦う少年たちを描いたSFファンタジー。「ブラック・ブレット」シリーズともども、ライトノベルに持たれていた凄絶なバトルや夢のある冒険にワクワクできるストーリーを、令和の時代に読ませてくれそうだ。


 新人賞からの登場作も幾つか。「第20回小学館ライトノベル大賞」優秀賞の牛若守『銃×石』(ガガガ文庫)は、豊富な鉱物資源がありながらクリーチャーが巣くっている伝説の島・アトランティスを舞台にした物語。親に売られてアトランティスに来たキャロンという名の少女が、娼館で働く代わりに身請けに必要な大金を稼ごうとして、フェグスという採掘者とともに島の奥地へと採掘に入る。当然起こるクリーチャーとの対決。銃撃戦をはじめとしたバトルを楽しめそうな新刊だ。11月18日発売。

 餅宮『偽装カップル開始五分で好きになっちゃった』(MF文庫J)は、「第22回MF文庫Jライトノベル新人賞」最優秀作。成績では常に自分を上回ってきた美少女の白峯華乃葉から、強制的なお見合いを逃れるために彼氏を演じて欲しいと言われた黒瀬瞬が、華乃葉のことを本気で好きになってしまったことから起こる奮闘を描く。偽装カップルを承知で引き受け即座に好きになってしまう華乃葉の魅力と、告白された彼女の心境が知りたいところだ。11月25日発売。

 「第6回HJ小説大賞」前期『小説家になろう』部門受賞という槻白倫『魔法少女異譚 1 アリスと悪食の王様』(HJ文庫)は、日本最強と名高い魔法少女のアリスが主人公だが、実は世界で唯一の男の魔法少女というところが気になるポイント。異色な立場で他者とはあまり触れあわないアリスが、苦悩を抱えながら「異譚」と呼ばれる人類を脅かす死の領域とどのように対峙していくのかを見守りたい。発売中。

 シリーズものでは、3部作の最終巻となる奈須きのこ『魔法使いの夜 下』(星海社FICTIONS)が11月10日についに登場。久遠寺有珠の襲撃を経た蒼崎青子と静希草十郎の前に新たな魔術師が現れるという展開の中、作者ならではのスリリングな魔術バトルが繰り広げられそうだ。劇場版アニメ『空の境界』のufotableが手がけた劇場版アニメの公開も11月20日に近づき、『空の境界』の配信も始まって、奈須きのこワールドへの関心が大いに盛り上がっている状況だけに、ゲームで楽しんだ世代も奈須作品のファンもこぞって手を伸ばすことになるだろう。

 気になる新シリーズでは、『キノの旅』の時雨沢恵一による『ドリフテッド I ~ジョン・スミスの江戸漂流奇譚~』(電撃文庫)が挙がる。ジョン・スミスという名のアメリカ人の軍人が、漂流の末に江戸時代末期の日本に流れ着き、将軍の徳川家斉に気に入られて侍となって江戸の町で暮らし始めるというストーリー。とはいえ、ただの江戸時代ではなさそうで、異能力者に近い忍者や術士が存在し、鬼や妖怪もいる世界で異邦人の冒険が描かれる。アサルトライフルやマシンガンが時空を超えてばらまかれるという展開もあって、筆者得意の銃器描写もたっぷり読めそうだ。

 ホッとさせてくれそうな1冊が、『辺境のお菓子番~無能と追放された首席宮廷菓子師、知らぬ間に王都で評判になっていました~』(DREノベルス)。いわゆる追放もので、首席宮廷菓子師の座を同僚に奪われ王太子との婚約も解消されたリゼットが、土地が痩せて食材にも乏しい寒村へと追い遣られても、そこで菓子を作り評判を高めていくという逆転劇が描かれる。砂糖がなくてもハチミツで代用するようなお菓子作りのノウハウを学べそうな新シリーズだ。

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