『ONE PIECE』いよいよクライマックスへ? イム VS ルフィのポイントを解説
2022年に最終章に突入すると宣言した『ONE PIECE』(集英社)だが、物語はゆっくりとだが、着実にクライマックスへと向かいつつある。
※以下、ネタバレあり。
『ONE PIECE』は、1997年から尾田栄一郎が週刊少年ジャンプ(集英社)で連載している大人気長編漫画で、現在は115巻までコミックスが刊行されている。
本作は、食べたものに特殊な力を与える悪魔の実(ゴムゴムの実)を食べたことで全身がゴムとなった少年・ルフィが海賊王となるため、麦わらの一味の仲間たちと冒険しながら、ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を求めて旅をする海洋冒険ロマン。
ルフィたちは様々な土地を訪れて、困っている人々を助けては、次の土地へと向かう。つまり大衆演劇等で知られている股旅物を、海賊たちの物語として展開しているのだが、ルフィたちの活躍と同時進行で小出しにされてきたのが、世界全体の謎と複雑な対立構造だ。
『ONE PIECE』の世界は、世界政府が牛耳っており、直属の軍事組織・海軍が世界の治安を守っている。対してルフィたち海賊は海軍から「悪」として敵視され懸賞金を掛けられて追われる立場なのだが、高額の懸賞金がかけられている海賊ほどランク上位の存在として畏れられている。そのトップが四皇と呼ばれる存在だ。
これまで四皇は、シャンクス、黒ひげ、ビッグ・マム、カイドウの4人だったが、ワノ国でルフィたちがカイドウとビッグ・マムを破ったことで二人が転落し、ルフィと、海兵に懸賞金をかけて海賊に襲わせる会社「クロスギルド」を結成したバギーが、新たな四皇となった。
つまり、海賊たちはお互いにしのぎを削っていたのだが、このトップ争いはワノ国編でひと段落しており、それ以降は、世界全体の謎をめぐる壮大な物語となっている。
ワノ国でのカイドウとの闘いで、ルフィはギア5の戦闘形態に覚醒し、ゴムゴムの実の真名が「ヒトヒトの実」で幻獣種・モデル“ニカ”であったことが判明する。ニカとは太陽の神と呼ばれた伝説の存在で、ルフィはゴムの力をより強化することで、身体を巨大化させたり、触れたものにゴムの性質を与えるといった圧倒的な力を手に入れた。
ニカの力に覚醒したルフィは、かつて大きな戦争があった「空白の100年」に「初めて海賊と呼ばれた」青年、ジョイ・ボーイの再来だと思われ、世界政府から恐れられる。
そのため、世界政府の最高権力者・イムは、巨人の島「エルバフ」に滞在するルフィの元に自ら赴き、その圧倒的な力でニカの力を操るルフィに闘いを挑んでいるのが、現在の物語だ。
突然始まったイムとルフィの闘いは、ラスボス戦のようなテンションで、毎回目が離せない。二人の戦いはこれまで『ONE PIECE』が描いてきた闘いとは異質なものだが、だからこそ本作で尾田栄一郎が描いてきたテーマが凝縮されているように見える。
これまで影のような存在として描かれてきたイムの本当の姿は、二本の角と翼を持つ威厳のある存在だった。能力名は「アクマの実」と表記されており、これまで登場した悪魔の実の能力とは根本的に異なるもののようだ。外見は文字通り悪魔そのものだが、同時に神や仏に近い存在といえ、使用する19の武器の名も世界中の神話や伝説に登場するものとなっている。
何よりその立ち振る舞いは常に超然としており、とてもシリアス。敵であっても喜怒哀楽がはっきりしていて、どこか愛嬌のあるキャラクターが多い『ONE PIECE』の中では極めて異質の存在だと、造形だけで理解できる。対するルフィは、ニカの力を発動すると、これまで以上に明るくユーモラスなキャラクターとなる。ニカの力を発現させたヒトヒトの実について「世界で最もふざけた能力」と劇中で語られるが、笑いながら闘い、表情がディフォルメされて目が飛び出す姿は、アメリカのカートゥーンアニメや昔のギャグ漫画のキャラクターのようで、極端に戯画化されている。
極端にシリアスなイムと極端にふざけたニカ化したルフィが対峙する姿は同じ漫画のキャラクターとは思えないくらい正反対のビジュアルだが、だからこそ、シリアスで真面目な奴よりもいつも笑っているふざけたヤツの方がカッコいいのだという『ONE PIECE』のテーマが凝縮されている。
ルフィはニカという「最もふざけた能力」でイムに立ち向かうのだが、その姿は漫画という最もふざけた力を武器にして世界という大海原で戦い続けてきた作者と『ONE PIECE』の姿そのものだと言えるだろう。
対するイムは、人知を超えた超越的な存在だが、ビジュアルが過剰すぎて漫画のキャラクターとしてはどこか窮屈に感じる。その意味でもこれまで『ONE PIECE』が築き上げてきた世界観とは相容れない外部からやってきた究極の敵と言える存在なのだが、このままイムが超越的存在のまま話が進むのか、ルフィとの闘いの中で、人間的な魅力や愛嬌が現れるのかが、今後の見どころだろう。
最終章と言いつつも、まだまだ大きな見せ場がたくさんありそうな『ONE PIECE』だが、このルフィVSイム戦が大きな山場となることは間違いないだろう。ルフィがどのような形でイムを倒すのか楽しみである。