【漫画】結婚が女性の人生で一番大事？ 幸せの意味を問う短編漫画『そこに在る花』
その村では、女性はドレスの背中に男性から花を飾ってもらい幸せな結婚をする。花を飾ってもらえる年齢になって数年、いまだ花無しのマヤは周りの目もあり気にしている様子だが……。
漫画家・鈴木日々喜（@Aburaya_co）氏が描く、“幸せ”の意味を問う短編漫画『そこに在る花』がXにアップされた。本記事では作中に登場する“伝統”やテーマについて、著者の鈴木日々喜氏に話を聞く。（青木圭介）
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ーー本作を創作した経緯を教えてください。
鈴木日々喜：元々同人誌で『王と襟縫い』という読切作品を発表していて、その作品も“伝統”や“風習”を描いた漫画でした。私自身、世界各地の“伝統”というものが好きで強い興味があったんです。それを読んだ編集さんに「“伝統”をテーマにした連載短編を描きましょう」とお話をいただいて、連作の2作目として“幸せ”について考え描いたのが本作でした。
ーー本作に登場した伝統にモデルなどはあるのでしょうか？
鈴木日々喜：明確なモデルはないんですけど、世界には結婚に関わる伝統が多くあります。またメキシコの「死者の日」でいうマリーゴールドのように、花が伝統や風習を彩ることも多いです。そこで結婚や花を要素として、独自の伝統文化を創作しました。
ーー“幸せ”について考えるなかで、「それぞれが思う自分自身の幸せ」に焦点を当てようと思った理由は？
鈴木日々喜：主観なんですけど、やっぱり幸せにはなんとなくの定義がある気がします。「結婚していたら幸せ」「お金持ちだったら幸せ」「ブランド品を持っていたら幸せ」などですね。でも何が幸せかは自分自身が決めていいと思うので、そういうメッセージを込めました。
また、世界でも幸せな人が多いと言われるスウェーデンに、なぜ幸せな人が多いのかが気になって、現地へ留学することを決めた友達がいました。帰ってきた友達に話を聞くと、「色々な人に話を聞いてみたところ、そもそも『自分自身の幸せが何か』をわかっている人が多いようで、その結果、幸福度が高いのではないか」と言っていたんです。要はお金持ちの人が多いわけでも結婚している人が多いわけでもなく、自分の幸せを自分の指標で考えているから、幸せかを聞かれたときに「幸せです」と答える人が多いということだと思います。確かに私も幸せかと聞かれると返答に困ってしまいますが、好きな漫画を描けていて親や友達がいて、そう考えると十分幸せですよね。友達から聞いたそのお話も頭に留めながら、本作の物語を考えました。
ーードレスの前を好きに飾るラストが印象的でした。
鈴木日々喜：多くのドレスやフォーマルな服って、ファスナーが後ろにあるじゃないですか。それを見て、「ドレスってファスナーを上げる誰か、家族やパートナーが家にいる前提で作られている服だな」と以前から思っていたんです。言い換えると、「誰かの手を借りないと好きな服を着ることができない」ということに、何か引っ掛かりを感じて……。
それが当たり前になっているかもしれないけど、「自分ひとりの手で着たいものを着たいように着る自由や幸せ」も素晴らしいものなんじゃないかと思います。その思いから後ろに花を飾るドレスを考えて、前に飾るラストに繋がりました。
ーー本作のなかで、鈴木日々喜氏自身が気に入っているポイントは？
鈴木日々喜：お祭りのシーンは花がたくさんあって描くのは大変だったんですけど、気に入っています。伝統や文化を一から作る作業は労力が必要でしたが、その分上手くできたときは嬉しかったです。
ーー鈴木日々喜氏が漫画を描き始めたきっかけは？
鈴木日々喜：アニメを見たのがきっかけで興味を持って、小さい頃から絵は描いていました。小学生だった当時学校で漫画を描くのが流行っていて、クラスの女の子でノートを切り貼りした雑誌のようなモノを作り、それぞれで漫画を連載していたのを覚えています。漫画を描くのが楽しかったしすごく良い思い出で、みんなはそこから成長し様々な道に歩いていきましたが、私だけそのまま同じ道を歩き続けている感じです。
ーー最後に、今後はどのような漫画を描きたいですか？
鈴木日々喜：まだ伝統をテーマにした連作短編は続くので、まずはそこでいい作品を描きたいと思っています。また偉人ではない、後世に名前が残らなかった人に焦点を当てた歴史漫画も描きたいんです。あとは“結婚”という文化に昔から強い興味があるので、その辺りについても描けたら嬉しいです！
■『鈴木日々喜作品集』はカドコミにて随時更新中！：https://comic-walker.com/detail/KC_006850_S/episodes/KC_0068500000200011_E?episodeType=first
ⒸHibiki Suzuki / KADOKAWA
