インドサイ、なぜ50年ぶりの出産に? 多摩動物公園職員に聞く、サイ繁殖の“特殊事情”

出産件数が少ないため、出産に立ち会った経験がなかった

――インドサイの妊娠期間は平均して460~496日と1年以上かかるとのこと。その長期間で母親サイにどのようなケアをされていたのか、苦労した点について教えてください。

 ターゲットトレーニングで飼育係との信頼関係を築き、各部位を確認できるようにしました。採食量の変化、糞の量の変化などを観察して個体の妊娠継続のケアをしました。また妊娠初期は、体形はあまり変化をしないので、妊娠を確定するに苦労しました。

 妊娠が想定されてからは、出産させる部屋の選定、出産までの管理、産室の準備(産室の柵の幅では赤ちゃんサイは抜け出せるので厚い杉板を床に壁のように設置、高さ30cmを5枚、床はウッドチップを厚さ50cmで敷きました。)や生まれた後に移動する通路に対しても同様の補強をしました。

草を食む親子サイ 画像提供=(公財)東京動物園協会

――それほどまでに出産が少ないとなると、サイの出産に立ち会った飼育員はほとんどいないかと思いますが、今回の出産までの飼育で苦労した点について教えてください。

 前回の出産に立ち会った職員はいないので、メスの前の飼育園での出産状況、準備について情報共有、他にインドサイの出産経験を持つ飼育園から情報提供を受け、妊娠の継続のために餌の量、個体への対応など試行錯誤しました。

――今回の誕生について、SNS上でも祝福の声が寄せられるとともに「早く見に行きたい!」という熱望の声があります。

 10月8日(火)より時間限定し、運動場に出る練習をはじめています。練習初日は、親子で運動場を探索しているようすが見られました。非公開エリアである室内と公開エリアである運動場を行き来できるようにしているため、見られないこともあります。詳細は当園Webサイトをご確認ください。

放飼練習中の親子サイ 画像提供=(公財)東京動物園協会
運動場を探索するインドサイの赤ちゃん 画像提供=(公財)東京動物園協会

――また動物園で赤ちゃんが産まれると、どんな名前がつけられるのかにも注目が集まりますが、インドサイの赤ちゃんの名前は決まっているのでしょうか?

 まだ、決まっていません。現在、当園Webサイトで名前投票を行なっています。飼育担当者が考えた5つの候補「ニコ」「コポン」「クミン」「ダイナ」「デコポン」から選んでいただき、ぜひご応募ください。10月27日まで募集し、決定した名前は10月31日ころ発表する予定です。

――インドサイを見る際の「注目ポイント」を教えてください。

 アジアでは、アジアゾウに続き2番目に大きな動物種です。皮膚は鎧のように重厚です。耳は前を向いたり後ろを向いたりとよく動きます。音に敏感で左右で違う方向に耳を向けることもできます。上くちびるを使い器用に草を食べたり、ゆったりプールで休んでいる姿をご覧いただきたいと思います。親子展示の場合は子供の活発な動きなど様々なしぐさをご覧いただけることを期待しています。

――最後に、この秋冬の時期において多摩動物公園の楽しめるポイントについて教えてください。

 暑さが和らぎ、過ごしやすくなる秋は動物の動きが活発になります。特にレッサーパンダやユキヒョウなど寒い地方に暮らす動物は、フワフワの冬毛をまとい、活発に動く姿をみることができるようになります。また、多摩動物公園は、自然も豊かなため、紅葉や落葉、積雪など季節の変化も楽しむことができます。

ユキヒョウ  画像提供=(公財)東京動物園協会

インドサイだけじゃない! 多摩動物公園の魅力

 50ヘクタールを超える世界屈指の広さを持ち、豊かな自然の中でたくさんの希少な動物たちがくらす多摩動物公園。インドサイのほかにもトキやニホンコウノトリなど希少動物の保護増殖にも積極的に取り組んでいるこの動物園では、SNS上でも大きな影響力を持つ。

 X(旧Twitter)のフォロワー数は27万人を超えており今年5月には木の幹にしがみついたコアラの画像が投稿されると「かわいすぎる!」と大きな反響を呼び、14万いいねの反応があった。今年10月には『コアラのあずまちゃん』(宝島社)というタイトルの写真集が発売されるなど、インドサイだけではなく愛くるしい動物たちが全国的にファンを獲得している。寒くなる季節で暮らす動物たちに癒されながら、インドサイの赤ちゃんの成長を見届けたい。

【施設情報】

多摩動物公園
所在地:東京都日野市程久保7-1-1
URL:https://www.tokyo-zoo.net/zoo/tama/

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